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雲珠桜は夏に彩る
黒と緑に注意報10







そんなことを頭の片隅で考えていると、突如フランの頭がこちらを向いた。いきなりのことだったので、私も一歩遅れてフランから目をそらし首を元の方向に戻す。





「それにしても驚きましたー。師匠の言う、白蘭に拐われた女の子がこんなに可愛らしいなんて。師匠も隅に置けませんねー」


「か、かわ…………?」


「ずっと、めっちゃくちゃゴツくて近寄りがたいこわーい人かと思ってましたからねー」


「あ、そ…………。何でそんな風に?」


「何て言ったって、昔ヴァリアーに拐われといて無事に帰還を果たした人物ですよー?ミーだって拐われた身だって言うのに…………」





ここでわざとらしくため息を大きくつくフラン。誤解を招くようだから説明を加えておくが、私は断じて無傷で、しかも一人でヴァリアーから脱出したわけではない。あれは九代目が居てくれたからこそ、帰れたのだ。
もし九代目が現れてくれなかったらきっと私は今ごろ…………何かの弾みで、この場にいなかったのかもしれない。いやはや、流石と言うかなんと言うか。九代目様様だ。





「そう言えばフラン、拐われてそのままヴァリアーに入ったんだっけ」


「ええ、よく知ってますねー。どうせ師匠が面白おかしく話を脚色したんでしょー?」
「え…………いや、うんまあ」




正確には紙面上の情報だ。




「それにです」


「?」


「その時ユカ姐さん、ベル先輩のナイフ、全部避けたんですよねー」


「え?」


「レヴィー先輩は一発やったとか」


「あー、爪引っ掻きと花瓶で殴ったやつ…」
「師匠にラチられたときも平然としてたって聞きましたー」


「別に平然とは…………」


「鳥頭の人と喧嘩して家出したときは、一人神社で野宿とか」


「え…………な、んでそんなことまで」


「うちのボスには『反抗期抜け出せ』とか言ってたらしいじゃないですかー」


「え、ちょ…………」


「後は…………未来に来たきっかけは、こちらさんのホワイトスペルの人から銃を奪おうとしたのが原因とか」


「すいません、ギブアップです」




私は下を向いて両手をあげた。これ以上はもう、お腹一杯だ。




「そんな人が一般人なんて言うんです、ごっつい人想像しても仕方ないと思いますよー」


「うん、そうだね。自分でも今聞いてて、何で今私が生きているか不思議になった」


「つーかお前、何やらかしてんだよ………」





後ろを振り向けば、野猿やγは呆れるような驚いているような、不思議な表情をしていた。マルコさんに関しては、いつもの素敵な笑顔が、今の話で口角がひきつってぎここちな笑顔を比べていた。






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