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雲珠桜は夏に彩る
黒と緑に注意報08








「…………」


「…………」





γと虫が目を合わせる。…………いや、正確にはγが虫を睨み付ける。

次の瞬間。





「う、え…………」


「あ、兄貴…………」


「…………」


「あーあ、やっちまったな兄貴」





軽い音がした。言葉で表現するには、少し難しい音だ。だが、そんな音に皆はそれぞれ不快な反応を示していた。
ユカは口元を手で押さえ、顔をγの足元から反らす。野猿も同様。周りのものは言葉を失い、唯一笑っているのはマルコのみ。…………いや、γもだ。γの表情はここから見えないはずなのに、広角が上がっているのがわかる。口角をあげて…………足元でグリグリと床に靴を擦り付けている。勿論靴の下には、あの虫が。





「う、え…………気持ち悪…………」


「な、内臓、内臓がぁ…………」


「ふん、俺が直々に始末してるんだ。礼こそ聞くが、批判は受け付けられねえな。ほれ」


「「ぎゃぁあああ!」」





面白がるように足をあげるγ。そこには潰れているのに足掻いているように見える虫が…………無駄に生命力が高いのがこの虫の特徴だ。





「んなもん見せないでぇ!!!!!!」


「兄貴…………鬼だな」


「太猿兄貴!」


「泣くんじゃねえよ、男が」





あまりの騒ぎに、ずっと無関心を貫き通していた太猿も出てくる始末。いよいよ収拾がつかなくなってきた。

ユカは見たくないと心の中では思いながらも、自分の目が勝手に動く事を呪いつつ虫の方を見る。最初こそだめだったが、今ならある程度は…………。




「…………おえ」




うん、普通にダメだ。少なくともあの足が動かなくなるまでは、見ることすらできない。
もしかしてこの後始末も自分がやるんだろうか?あんな状態の虫を?………絶対に嫌だ。

だが、どんなに私がいやがってもγは強制的に掃除させそうだと、ユカは見た。……考えただけで頭が痛くなってきた。





「あの後の後始末とか嫌すぎる…………」


「それは最悪ですねー。あれ、きっと内臓が床にこびりついてますよー」


「うわ。嫌なこと言わない………で、え?」


「あ、でもノープロブレムです。あれミーの幻覚なんでどうとでもできますしー」


「…………あれ?」





どうしましょー、γさん。私グロいもの見たショックで幻覚が見えるようになっちゃったみたいです。なんかカエル被った変人が隣で一緒にいるんです。





「あ?んなもん元からじゃねえのか?」


「あ、ひどい」


「幻覚が見えるんですか?頭イカれたなら叩いて直してあげましょうかー」


「いやいや!」





どうしましょ。
やはり私の隣にはカエルがいるみたいです。





「…………って、あれ(虫)幻覚なの?」


「はいー。あ、もっとグロい方が良かったですか?」


「絶対に嫌。って言うか幻覚なら早く消して!」






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