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雲珠桜は夏に彩る
新たな問題…………?07








ズズ…………。




広い部屋に2人分のお茶の啜る音と食器のカチャカチャと重なる音が響く。テーブルの端っこではディーノが夕飯のサンマの塩焼きを頑張って……うん、頑張って摘まんで解体している。
つまりこの部屋は誰も喋ってないわけで。
私はその沈黙に耐えきれず、洗剤の泡まみれとなっていた手を一度止めた。





「……そこの人達、どうせなら世間話でもしてください。沈黙が物凄く辛いの、私だけですか?」


「ん〜?……あ」


「ディーノさんは無理に喋らなくて良いです!喋らなくていいから、それ以上テーブルの上に魚のほぐし身を溢さないで」


責めている訳じゃないが、ユカはディーノにピシャリと言い放つ。


「す……すまん」




…………夕飯を焼き魚にしたのが間違いだったな。





「ねえユカ。本当に泊める気なの?……嫌なんだけど」



妙に膨れっ面になった雲雀は軽く二人を睨んだ。とりあえず夕飯でもと二人の戦いを止めて、そしてその流れで二人を泊めようと提案したのは私だ。もちろん雲雀さんは嫌がったが、まあいいじゃないですかと軽く流せば雲雀さんも強くは反対しなかった。玄関で私の靴を一つダメにしたのが理由だろう。




「ええ。まだディーノさんから話したいこととか聞いてませんし、そっちの方が良いでしょ?」


「……部屋は?」


「勿論リビングで雑魚寝です」


「えっ!?」


「そう……ならしょうがないね」


「ありがとうございます」


「だとよ、ボス」


「は、はは………」




ディーノが頬をひきつらせ苦笑を漏らしていると、雲雀は「精々雑魚寝で腰を痛めるがいいさ」と切り捨てる。私も雲雀さんの言葉を聞いてほっと一安心。
え?本当に雑魚寝させるのかって?
……いやだ、私だって鬼じゃありませんよ。ちゃんとリビングの床の間の和室に布団を敷くぐらいの事はします。だがベットに慣れている二人からすれば、敷布団も雑魚寝も似たような物かもしれない。



「ちょいとユカ嬢。テレビ付けさせてもらうぜ?」


「どうぞどうぞ」




ロマーリオさんがポチッとテレビの電源をいれる。テレビは静電気を発しパッと明るくなって、静寂だったこの部屋に少し騒がしさを出してくれた。
丁度「世界のドッキリ映像!」等という興味のそそられるものを映し出している。
私はそれを確認すると、止めていた手を動かした。


…………くそ、この汚れ取れにくいな。




「…………うっし、ごちそうさま!これでどうだ?」



ずいっとディーノが魚の乗っていた皿を私に突き出す。



「……うん」



その皿は多少の食べ残しが残っていたが…………十分合格範囲内。




後は。





「…………」




雲雀の方を見る。雲雀はこちらをちらっと一別しただけで何も言ってこない、眉間にシワも寄っていない。




「合格です!ディーノさん」


「ふう…………やっとか」



ディーノはそのまま椅子の背もたれに体重を預ける。



「ここまで来るのに五回もチェックされるとは…………ボスもまだまだだな」


「うるせ、恭弥は厳しすぎるんだ」


「ははは」





ここに来てから、私は魚の食べ方が上手くなったとちょっと自負をしている。勿論それは雲雀さんのせい……いや、お陰。
元々私は、魚を食べる時に親にもそんなに注意されたことなかったので、結構きれいに食べれている物だと思ってた。思っていたのだが……





「……もうちょっときれいに食べなよ」




あの一撃は重かった。ガツンと来た。








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