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雲珠桜は夏に彩る
逃れる先は、黒01







「ユカチャン…………やっと、手に入れた」


「…………来ないで…」


「やっと、手に入れたんだ…………これで、僕はこの世界だけじゃない。向こうの世界も手に入れられる」


「!!?」





その言葉に、思わず顔を上げる。
顔を上げると、思った以上に顔が近くにあった。でも、上げた今すぐに反らすのは負けなような気がして…………視線と視線が、ぶつかりあった。

夢の中の世界。それが、どうしても頭から離れない。崩れていく家屋、ビル。泣き叫ぶ、人の声。
地獄絵図がそこにはあった。





「お、ユカチャンそんな顔もできるんだね」


「…………私のせいで世界を壊すなんて、絶っ対にさせない」


「強気だね」


「大体、私も帰れないのに向こうの世界に行けるわけ無い」


「そう思う?」


「?」





目の前の白蘭が、にこりと口角を上げる。白蘭のその顔は、本当に嬉しそうな顔だった。まるで一番欲しいおもちゃを親に買ってもらえることが出来た時みたいに。

…………ある意味では、白蘭もそうか。
自分の欲しい玩具(世界)を、もうすぐ手に入れられる。…………私のせいで。





「僕もずっとそう思っていたよ。っていうか、いくら僕がパラレルワールドに飛べるからって、流石に異次元の存在は信じれなかったからね」


「じゃあどうして」


「君の存在のおかげだよ、ユカチャン」


「…………」





白蘭が、一歩歩を進める。私との距離は一気に縮まり、顔との距離も拳一個分になった。





「君がこっちに来てから、僕の認識…………常識が変わったんだ」


「!?」


「あらゆるパラレルワールドというパラレルワールドで情報をかき集めたよ。それでやっとユカチャンのいたという異次元の確証が得られた」


「でもそれだけじゃ」


「もちろん、行き方も沢山調べたよ。いや〜、流石に骨の折れる作業だったね。大変だったよ。…………でも、そのおかげでそのことについてもあらかた検討がついた」


「?!嘘、」


「そしてそのためにはユカチャン。君が必要だってこともね」


「!」





クイッと私の顎を持ち上げられる。嫌でも合う視線。…………胸の奥が、モヤモヤした。気持ち悪い。





「ちゃんと、働いてもらうからね」


「っ」





パシンッ!

軽く乾いた痛快な音が、室内に響いた。響くと同時に私の右手もジンジンと熱を帯びる。
白蘭の顔が、斜めに傾いていた。

誰が…………誰が、自分の世界をあんな目に合わすために!

もはや社会として成り立っていなかったあの自分の世界。
自分のせいで、社会も世界も環境も人も動物も全て、無茶苦茶になっていた。
あんなことをするために働かせられるくらいなら、私は……………私は。






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あきゅろす。
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