雲珠桜は夏に彩る 崩壊音と言う名の、足音10 「だから………ツナさん達が言ってくれるのをずっと待ってました。でも、そう思っていたらユカちゃんが居なくなって」 もう我慢できない。 自分達だけ呑気に家事をしているだけなんていやだ。 ユカの失踪が今回の事に関わっている事はすぐに分かった。だから。 「本当の事を知りたい。知って、少しでも皆の手伝いが出来るように」 「…………って、思っていたんですけど」 急に二人の表情が変わった。凛々しく、決意に満ちた表情が一気に一変する。 その表情の変化に、少しビアンキは驚かされた。 「このまま意地張りあってても、なんだかツナさん達…………教えてくれない気がしてきたんです…………」 「お兄ちゃんとかは特に。それに、このまま皆が偏った食事とっていたらとか考えると…………」 「プッ」 「!?ビ、ビアンキさん?!」 思いがけない言葉が二人の口から発せられ、思わずビアンキは噴き出しそうになる口を手で押さえた。 正直、もっと意地の張り合いになって泥沼化する所まで想像していたが…………相手の健康状態を自分達の意地より優先させるぐらい、京子達は大人だ。 「あなた達はツナ達がすぐに降参すると思っていたみたいだけど…………そう簡単には、いかないと思うわ。今、あなた達が感じているようにね」 「何でですか?」 「あなた達に変わってほしくないから。後は男のプライドってやつね」 「…………ユカさんが居なくなっているのに、ですか?」 「ええ。それとこれとはまた違うわ。…………どうする?」 何を、とは言わずもがな。ビアンキは敢えて、二人の顔を見ないよう尋ねた。 「…………京子ちゃん」 「ハルちゃん…………」 互いが互いに己の顔を窺い思慮する。 …………さっき見た、クロームの背中の傷。その時のクロームの言葉。あれで、今心を大きく揺さぶられている。 皆、あんな傷を作っている…………そうしてまで体を張っている。それで私達は不満が募り、家事を放棄する。 少なくとも、皆は隠し通す理由になるだけのことをやっている。自分達に知られたくないから、体に負う傷の数を増やしていてでも日々、『修行』と言う名目で汗水垂らしている。 それに比べたら…………自分達はなんて幼稚なことをしていたのだろうか。 「「…………」」 二人は、コクりと首を縦にゆっくりと振った。…………まるで固く閉ざすその口が、意思の強さを表しているようだった。 [*前へ][次へ#] |