雲珠桜は夏に彩る 崩壊音と言う名の、足音08 「ツナさん!」 「え、えっと…………」 再び追いつめられる状況。助けを求めようと山本や了平の方を見るが、二人とも白旗を上げている。どうやら上手く逃れる手が見つからないらしい。しかし、了平の目は絶対にバラすなと言っている。 それはそうだろう。了平に関しては、妹である京子を危険な事に巻き込ませるなんて言語道断なのだ。 追いつめられたツナは目を泳がせながら、出まかせを口にする。 「ちょっ…………な…ななな…何言ってんの?ミ…ミルフィオーレ?ビャクラン?…………な、何だそれ?」 「もう誤魔化されるのはたくさんです!私達だけが知らない事情を隠しているのは分かっているんです!!ハル達も皆さんと一緒に生活をしている以上、真実を知る権利はあります!」 「うそ…………急に何で?」 「ユカちゃんの事だってそうだよ、ツナ君。…………私達だって、一緒に戦いたいの!」 二人の、二人のまっすぐな思いが嫌なほど胸に突き刺さる。 もう隠しきれない。 そう思った。 「沢田ぁ!!」 「!」 名を呼ばれ、肩がびくりと動く。そのままゆっくりと振り向けば、眉をつり上げた了平がいる。 心配をかけたくない。 危険なことに、巻き込みたくもない。 そう言ったのは、誰か。 皆を守る。そう誓ったのは、誰だ。 この事を話して、二人の笑顔が消える。そうじゃないと、言えるのか。 ………二人がこんな戦い、知らなくていい。 了平の一喝が、たった一言がツナの中の迷いを吹き飛ばした。 「ごめん…………気持ちは嬉しいけど、でも、本当にもうすぐなんだ。もうすぐ何もかもが終わって元の世界に帰れるから。そう…………それにユカちゃんだって絶対に」 探しだしてみせるから。 その声は、予想以上に掠れていた。 今になって、自分の喉が物凄く渇いていることに驚いた。 「だから…………俺たちを信じて、もう少し我慢して、くれないかな…………?」 「…………無理です」 「え…………?」 ハッと、顔をあげた。すると、思わず息を飲んだ。 二人の表情には、いつもの笑顔が消えていた。代わりに残っているのは…………悲しみと、何かを堪えるかのような顔。 …………何を堪えている? 正直、答えることでいっぱいいっぱいになっているツナには、そこまで頭が回らない。だが、周りの山本や了平を見ると、二人の表情にも変化があった。 「…………分かりました。それならこちらもそれなりの処置を取らせていただきます」 「え?」 「京子ちゃん」 「うん」 「「私達は共同生活をボイコットします」」 [*前へ][次へ#] |