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雲珠桜は夏に彩る
崩壊音と言う名の、足音01








「…………」





嘘だと信じたい…………。いや、きっと嘘だ。父親達はギリギリ逃れたに違いない。そうだ、きっと。あの瓦礫の下になんか、埋もれているはずがない。
でも、神様は意地悪だった。






『あーあ、ユカチャンのご両親、巻き込まれちゃったね』





神様とは非情だ。こんな悪魔に宣告させるなんて。
遠くに見える瓦礫の山。見えるのに駆け付けることの出来ない私はどんなにもどかしいだろう。こんな男の言葉なんて信じない。両親は絶対に無事だ。私はそう思い続けてもがきあがいた。






『あれ、もう死んでると思うよ?』


「(五月蝿い)」


『諦め悪いなあ…………。じゃ、これでどう?』


「?!」






次の瞬間。瓦礫は跡形もなく『消えていた』
足に力が抜けていくのが分かる。何も考えたくなくて、頭の中を真っ白にした。
在るのは、両親が居なくなったという事実だけ。



何で。生きていたのかも知れないのに。


何で。私は巻き込まれないの。


いっそ、私だって…………



私は隣にあの男がいることなんてなりふり構わず、力の限り叫んだ。





「………!………」




嘘だ。




「…………ぁ…………!」





こんな世界嘘だ。
そもそも、何でこんなことになるんだ。関係の無い筈の私の世界があの男に侵略されるなんて。そんなバカな。





『駄目だよ、逃げ出しちゃ。…………君は大切な人質なんだから』





あの男の声が、聞こえた気がした。









『そこで使うのが『隠しアイテム』さ!ユカチャンだよ!』


『たった一人の存在でボクを楽しませることが出来るんだ!これって凄いことなんだよ、ユカチャン!』














白蘭の言葉はやけに耳に残る。この言葉だって……。





「…………」





もしかして。
もしかして…………だから?

私が捕まったから…………こんなことになったの?

だから私だけ、私の世界がこんなことになっているのに、無事でいられるの?

私が、白蘭の…………傍にいるから?






「ユカチャンが上手い具合に媒体となってくれているからね。助かったよ。ユカチャンだけは丁重に扱わないとね」





非情な神は私を見捨て、残酷な男は私を見放さなかった。








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