雲珠桜は夏に彩る
騒動、あります04
それは、突然だった。
無事騒ぎに騒いだ歓迎会は幕を閉じ、各自部屋で休養を取っているときだった。
もうこんな夜だ。結構バイクの練習で体力を使っていたらしい私は、一杯水を貰ってから休もうと思い、台所へと足を運んでいた。
今日はこちらに泊まる予定だ。
「あら、まだ寝てなかったのね」
「ビアンキさん!」
「今日は楽しめた?」
「はい、もちろん」
寝る前に一風呂浴びた様子のビアンキが一人、そこにいた。
ビアンキの髪は少し湿っている。ビアンキはその髪を少し鬱陶しくしながら、隣で私と同じように水を煽った。
「笹川先輩も困った人ですよね。秘密にしてるのにあんなこと叫んじゃって」
「本当。今の姿を見ていると、本当に変わってないって実感するわ」
「十年後と?え…………?本当に変わってないんですか?!」
「基本的にはね。…………表向き大人しくなったように見える分、大人の方が質(たち)悪いかも知れないわ」
「うっわ………想像しただけで疲れるかも」
紙面上の十年後了平。私が紙面で見たあの人は、きちんとした大人になっているように見えたが…………あれはビアンキ曰く表向き、と言うことなのだろうか。場面が場面なために普段が想像つかない。
……まあ、やるときはやる、ということか。
私は思わずクスリと笑いを漏らした。そうすると、ビアンキさんも同じように笑いを漏らす。そう二人して笑ったとき。今の状況からは有り得ないような、鼓膜、いや空間を裂くような爆発音が響いた。
「!?」
勿論私達二人は一斉にドアに目を向けた。
ビアンキは最悪の事態を想像してか、殺気を無意識に滲み出す。その殺気で私はハッとさせられた。
…………まさか、ミルフィオーレ?
「ユカ、あなたはここで待ってなさい」
そういうが早く、ビアンキはドアの外へと駆け出した。
ギャオオォオォォ!!!
「っ!」
そこまで大きくはない悲鳴のような雄叫びが、私達の耳をつんざく。
…………これは、この階じゃない。
「!上で何か起きてる…………!?」
「ビアンキさん、上に…………」
「ちょっと待って」
行きましょうと言いかけた私を、ビアンキは片腕で制す。
「…………おかしい」
「え?」
「こんな騒ぎなのに警報が鳴らないわ」
ビアンキは潜めていた眉を、更に眉間へ寄せた。
ビアンキ曰く、この基地は襲撃に備えて、外から基地を破壊されるようなことになった時に警報をすぐに発するシステムだそう。
これがミルフィオーレからの襲撃だとすると、今の時点で警報が鳴らないと言うのはおかしいと言う。それはつまり…………
「内部からの爆発…………」
「…………って、ツナ達?」
「丁度、男子の寝室もこの真上よ」
心配して損した。
そう言うかのように、ビアンキは今の爆発音で身を固くしたせいで凝った肩をグリグリと回す。それと同時に殺気も無くなり、一気に空気は軽くなった。
「って、そんな悠長に構えてていいんですか?!これほどの爆発音で!?」
「十年もあのメンバーでいたらこのくらいの爆発音は日常茶飯事よ、ユカ。気にすることないわ」
「え、ええ〜?」
良いのか、それで。と言うかそんなことが日常茶飯事で良いのか、ビアンキさん。
狼狽える私を他所に、ビアンキは一杯水を煽るとその場から引き上げ始めた。本当に放っておくらしい。
「え、マジですか。ビアンキさん」
「あなたも早く寝なさい。寝不足は女の敵よ。あの子達は自分で何とかするわ」
「ええ…………?」
「むしろ心配なのは京子達かしらね。この騒ぎで起き出してないかしら?…………ちょっと見てくるわ」
言うが早く、ビアンキは本当に部屋をで出ていった。残された私は暫く開いた口を閉じることもせず、ただただ扉を見つめた。
「…………行って、みるか?上に」
このままベットに入っても寝付けるわけもない。結局その結論に辿り着いた私は、水が少し入ったコップを流し台に置いて、食堂をあとにした。
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