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雲珠桜は夏に彩る
非常時での日常07








「私の得物と竹刀とは結構違うものよ。用途が違えば型も変わってくるし。それに、私の動きに剣道とかの摺り足は合わないの」


「へえ」


「それに私があの得物を使うときは本当にヤバイときだけ!基本は空手でやってやる」


「へ、へえ…………」


「結構気持ち良いのよね、蹴りが決まったときとか…………スカッとして、ザマーミロって感じ?」


「…………」






怖い、弥風さんの笑顔ほんとに怖い。

きっと本人はいつもの笑顔のつもりなんだろう。だが、いつもの笑顔より1.5倍くらい黒さが増してるし、舌舐めずりするときに見える真っ赤な舌が更に恐怖を掻き立てる。そう…………狙った獲物は逃がさない的な。
もしかしてあの雲雀さんの戦闘狂の根源に、この人も関わってくるのではないか。そう思った。





「ユカ。戦闘に大事なもの知ってる?」


「…………え?」


「これよ」


シュ…………


「?!」





弥風さんの拳が………私の頭が元あった場所にあった。私はほんのわずか、僅かの時間差で、弥風の拳が届かない位置に避けていた。
額に脂汗が滲む。





「わお!上々じゃない。よく避けたわね」


「『よく避けたわね』じゃないですよ!弥風さん!何するんですか!」


「んーと…………テスト?」


「!?」


「反射神経と動体視力のね。この二つが戦いに必要なものと私は思うのよね」





うんうん、と腕を組み納得したように頭を縦に揺らす弥風さん。言っておくがこっちは納得なんかしちゃいない。
今も頭の端にこびりついた映像が走馬灯のように頭をぐるぐる回っているし、心拍数は治まるどころか上がっていっている。脂汗も汗腺がイカれたんじゃないかってくらい吹き出ている。

それほど弥風さんのパンチは凄かった。





「…………弥風さん。本当に女ですか?」


「失礼な。れっきとした女よ」


「女にしとくのが勿体ないですね…………」





はは…………と、乾いた笑いを洩らす。

すいません弥風さん。今そんなに体を反って胸を強調されても突っ込めないです。そんな余裕無いです。
早くお風呂に入って温かいお湯とお菓子と京子ちゃんとハルで癒されたい。





「まあそんだけの反応が出来れば明日も大丈夫でしょ」


「ほ、本当ですか?」


「あっはっは、大丈夫大丈夫!そんなに怯えなくてもちゃんと手加減するから!」


「うげっ…………」





強く背中を叩かれる。私の背中からは叩いたときの良い音が響いて、弥風さんがどれだけの強さで叩いているかが物語っていた。私はそのあまりの強さに、思わず咳き込んでしまった。



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