雲珠桜は夏に彩る
非常時での日常03
皆を前にして、その事を告白する自分の姿を想像してみる。…………あり得ない。言いたくないとかじゃなくて、皆の前で顔を真っ赤にさせて言い出せなくなるのが落ちだ。自分が逆の立場で同じようなことをされたら、正直ウザいと思うかもしれない。
しかし、だからと言って隠していくのも何か違う。…………雲雀さんにこの事を聞いても、きっと相談にならないし。
チャンスが来たら、それとなく言う?
…………うん、『それとなく』言うことにしよう。あくまでその時が来たら、だけど。
一人でそう唸って夢中にオムライスを頬張った。それとなく周りを見渡せば、皆も美味しそうにオムライスを頬張っていた。だけど、京子ちゃんとハルだけは様子が違った。
気になった私は、口の中に残ってたチキンライスを飲み込んだ。
「二人とも?どうかした?」
「ユカさん…………」
「えっとね…………」
二人とも、なぜかそわそわしていて落ち着かない。自分達の手前にあるオムライスにも、手付かずのまま。何故だろう?
二人はしばらくすると、何か決意したように口を開いた。
「あのね、ユカちゃん。食べ終わったらで良いんだけど…………よかったら夕飯、クロームちゃんの所に持っていってもらえないかな?」
「え?クローム?」
「うん」
「確かユカさん、クロームちゃんと仲良かったですよね?」
「え、まあ…………」
「クロームちゃん、ユカちゃん相手なら食べてもらえるかもしれないから。お願いしてもいい?」
「勿論」
そんなことくらい、お安いご用だ。
クロームはこの基地に帰ってからまだ一度しか顔を会わせていない。それはクロームが部屋にこもりっぱなしだったりこっちが忙しかったりで………。
そこでユカの頭に疑問が湧いた。…………いくら忙しかったからといって、一度も会っていないのはおかしいんじゃないか。食事の時など、顔を合わせても良いはずなのに。
京子ちゃんに、頭に浮かんだ質問をぶつける。
「…………もしかしてクローム、一度も御飯、食べてないの?」
「えっ、でもごはん食べられるぐらいに回復したって…………」
「ごはん、勧めてはみるんだけど………」
そう言って、悲しそうな表情を浮かべる京子ちゃん。ハルも同様だった。
やはり、自分の作ったものを毎回拒否されるのは辛いのだろう。それに、クロームの体のことも心配なのに違いない。
せめてもの救いは、けして自分達が嫌いでそんな態度をとっているわけではなく、慣れていないと言うことが分かっていることか。それでもこの胸のわだかまりは取れやしない。
その事を思うと、胸がキュ…………と締め付けられた。
私が持っていったら食べてくれるのか?
食べぬなら、食べさせてみせようクローム髑髏…………なんて。
「私で食べてもらえるか分かんないけど…………やるだけやってみるね」
「ありがとう、ユカちゃん」
お盆をもって向かう先は、クロームのいる部屋。目的はクロームにご飯を食べさせること。勿論、無理矢理食べさせるようなことはしない。
私は気合いをいれるため、うっし!と少し力んでみた。…………張り切りすぎ?そんなもの関係ない。
それに…………クロームには、ちゃんと皆とせめて話せるくらいには仲良くなってほしい。そんな気持ちが私の背を押した。
いざ行かん、クロームの元へ!
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