雲珠桜は夏に彩る 非常時での日常 そろそろ夕食の支度を始める時間帯になった頃…………。無事、皆が基地にケーキの箱を持って帰ってきた。 「お帰り、皆」 「ただいまです!」 「ケーキ買ってきたよ!」 各々、晴れた顔付きとなって帰ってきた。 「何処に行ってきたの?」 「それぞれ自分の家に行ってきたの」 「そうです!部屋の中とか全然違う感じだったのでビックリしました!」 イタリア関係とかの本が増えてました!と興奮した様子で、拳を握りしめて話してくれるハル。その勢いを目の前でやられたのは物凄く困ったけど、取り敢えず元気そうなのでホッと肩を撫で下ろした。 「ユカちゃん、ケーキ一杯買ってきたよ!新作も!」 「うわっ、すごい美味しそう!」 「ふふ、夜皆で食べようね!」 「うん!」 ケーキ箱の中を覗き込めば、色とりどりで見たこともないようなケーキがズラリと並んでいた。十年間の間の試行錯誤した結果だろう。全てのケーキが輝いて見えた。 しかも、ここにいる全員の分を買ってきたらしい。1つ2つじゃ納めることのできなかった量は、私の知っているなかでダントツだ。 「ちゃんと雲雀さんや草壁さん達の分まであるんだよ」 「本当?よくこんなに買ってこれたね」 「ビアンキさんが奢ってくれたの。何故か領収書にはツナくんの名前を書いていたけど」 「え?それ…………」 ツナの奢り? それは今の中学生のツナに請求が行くのだろうか。それとも大人のツナ? こちらは奢ってもらう身だが、そこは素直にビアンキさんに出してほしいと思う。 せめて後者であってほしいな、と願いつつ私は申し訳無さからツナ達の姿を探した。 「あれ?京子ちゃん、ツナ達は?」 「もう帰ってきてるはずだけど………」 「だ、誰かああああ!!!!?」 「びえぇぇぇん!!!」 「つ、ツナ?ランボ?」 基地に大きく響く声。これが雲雀さんを呼ぶベルになるんじゃないかってほど(咬み殺しにきそう)、反響が凄かった。 驚いてドアの方に顔を向けると、そのタイミングに合わせたようにドアが開く。そこからは、慌ててランボを前につき出すような形で持った、ツナが突っ込んできた。表情は今にも泣きそうだが、眉が吊り上がっているところから怒っているようにも見える。 ヒーローの登場にしては、あまりにも情けない姿だった。 「ら、ら、ランボが!」 「びえええええん!!ユカ〜!京子〜!ハル〜!」 「な…………何があった」 唖然とする一同。状況がうまく飲み込めない。ランボは涙を流しながら隙間なく目を擦っているので、徐々に腫れが酷くなって凄い顔になっている。泣き喚く声の大きさもいつもの比ではない。 取り敢えず私は濡れたタオルを持ってきて、グシャグシャになった顔を拭いてやろうと近付いた。 …………異変に気付いた。 [次へ#] |