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雲珠桜は夏に彩る
女達の本音と苦悩08








「この後の片付けとかは私に任せておいて。京子ちゃん達、待ってるんでしょう?私だってケーキ買ってきてもらう約束してるんだから早く行ってもらわないと」





机の上には、とても一人分とは思えないほどの食器が仲良くならんでいる。これを片すのにはかなり時間が掛かりそうだ。





「!そう言えば、本当にユカちゃんは行かなくていいの?」


「私?うん。ほら、さっさと行った行った!男が女を待たせちゃいけないよ!」


「え?う、うん…………」


「お土産よろしくね〜」


「?あれ、ケーキ買ってきてもらうんじゃねーのか?」


「女子の胃袋、デザートに関しては無限なり…………ってね」


「…………つまりケーキ以外にも買ってこいっつー催促か」


「ご名答!」






ぐっと親指を立てて目の前に差し出す。それを皆は呆れながらも笑って返してくれた。
…………私が行かないからって、余計な心配とか掛けたくないし、皆には私の事なんて気にせず、気兼ねなく行って来てほしい。

だから、皆が笑ってくれて、安心した。

そして皆は、バジルを私に預けて地上へと出掛けて行った。次にサイレンが鳴り響く事はなかった。無事、行ってくれたのだろう。その事に私はホッとしながら、机の上に残った皿を片づけるべく、服の袖をまくった。





「って、バジル君はどうしよう…………」






机の上にうつ伏せになって寝ているバジル。その寝顔はあどけない物。力尽きてこのような体制になったのだろうが………あのままでは、首を痛めてしまう。取り敢えず、バジルからどうにかしなければ。

私はとにかく、バジルの腕を取って場所を移動させた。部屋の端にある備え付けのソファーまでの移動だったが、それだけでも体制的に辛いものがあった。しかも起こさないように気を遣わなくてはならないので、かなりの神経を使うことになる。






「軽いのに…………軽いのに、重い…………」





流石、と言うべきか。
バジルの体を支えるだけで、いつもしていたであろう修行によって鍛えられた筋肉が伝わってくる。こんなあどけない寝顔を晒していても、やはり男の子なんだと実感せざるをえない。
そのせいか筋肉のせいか…………それなりの重さが肩に掛かる。日々順調に育っていらっしゃるらしい。

無事にソファーに辿り着くと、私はそっとそのまま寝かせる。風邪を引かれては堪らないので、そこら辺から毛布を取ってきて上に掛けた。





「さて………。いつもの如く、始めますか」





食器の重なる音と水の音、それからバジルの寝息が食堂に響く。
その合奏は、食器の量からして、しばらく止むことはなかった…………。





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