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雲珠桜は夏に彩る
女達の本音と苦悩05







雲雀side




僕は丁度、自室にて『ボンゴレ匣』なるものを見ていた。今日は色々とあって疲れて…………横たわって、自分の手を頭の下に枕変わりとしておいていた。

この『ボンゴレ匣』と言うのは、僕がこっちに来てすぐに使った匣とは違っていた。何か凝った作りとなっている。
何故かこれを見ていると、僕の何かを沸き立てるような気がした。

奇しくもこの匣は十年後…………24となった草食動物、沢田綱吉からのプレゼントだという。『あの』沢田綱吉だ。気に入らない。
当然その事を聞いた僕はその匣をすぐに捨てようとしたけど、その直後にユカに止められた。強く止められてしまったので、捨てる事が出来ない。
だから今、僕の手元にその匣があった。







「ひ―ばりさんっ」


「…………何」







ユカがドアの奥からひょこっと顔を覗かせる。その行動はまるで子供の様で…………ユカがやると、何か企んでいるように見える。その証拠に何故か口角が上がっているようだ。

…………何か企んでいるな。

取り敢えず、ユカを自分の傍に呼び寄せる。ちょいちょいと手で招くと、嬉しそうな顔をしてこっちに来た。それを見て、思わず口角が上がりそうになるのを抑えた。






「何をそんなニヤニヤしているの」


「え、嘘。そんな顔になってる?」


「物凄く」


「ぎゃ」







ユカが自分の顔を押さえる。今更押さえた所でもう見てしまったから意味がないのだけど。







「それで?何か用があったんじゃないの?」


「そう、そう!それを聞きに来たの!」


「?」


「あのね。…………今日、こっちで京子ちゃんとハルとでお泊まり会をしたいと思ってるんだけど」


「却下」


「やっぱり…………」






ダメか…………。
ユカは肩を萎ませる。
僕が群れるのが嫌いなのは、ユカだって知っているでしょ。






「大体、ここに居る限りいつでも会えるんだからそんなことしなくても…………」


「京子ちゃん達は京子ちゃん達で昼は忙しいの!だからゆっくり出来る夜に話したいね―って」


「いつも長話してるじゃないか」


「そんなにして…………」


「無いとは言わせない」






そう、いつも。
昨日もギリギリまで向こうの基地に居て話してきたかと思うと、今日も会ってきたらしい。お陰でこっちに居る時間はほんの少しだ。一応関係も進歩したはず…………なのにむしろ、一緒に居る時間も短くなってきている気が。






「何をそんなに話しているんだか…………」






口混じりの口調でそう漏らすと、ユカは普通に質問と思ったのか口を開いた。






「え?そりゃ、そん時そん時でふと思い出した事とか、その日にあった面白い事とか…………?そっから話がどんどん繋がって止まらなくなっちゃうんだよね」


「…………」






女というものは全く理解できない。そんな事を話して一体何が面白いのか。

そんな僕の様子を感じ取ったのか、ユカは慌てて体の前で手を振る。





「それが女の子ってもんなの。雲雀さんには理解できないかもしれないけど」


「ふうん…………」


「お願い、雲雀さん!一晩だけでいいの!迷惑かけないから」


「…………群れるじゃない」


「三人でも?」


「うん」


「き、厳しい…………!」






うっ…………と言葉を詰まらせるユカ。

…………言葉にして言う事はないけど、これ以上ユカとの時間を取られるのは僕としても不本意だ。それくらい、あの草食動物達も分かってはくれないのだろうか?

その草食動物に何も話してもいないくせに、そんな事を考える。

だが、ハル達の事だ。きっと付き合っている事を知ったとしても、一緒に住んでいるのだからと言って、友情を優先させるようにユカを促してしまうのだろう。そしてユカもそっちに流れていくに違いない。今までの行動からして、何となく予想がつく。

僕はとにかくダメ、と念を押した。





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