雲珠桜は夏に彩る
女達の本音と苦悩02
外は危険だからと言われ、こんな秘密基地に閉じ籠り、自分達のできる最大の事である家事を毎日淡々と進める。ツナ達は過去に戻るためといって、毎日修行に明け暮れる。
何かある。
なのに、その「何か」が分からない。
私がその立場だったら…………辛い。もう何かあるのは分かっているのに、教えてもらわない方が辛いときだってあるって分かっているのに。
「でも。それでも、どうしても二人が知りたいって言うなら私は止めないし、なにも隠さずに言う」
「…………」
「自分だけ知らないって言うのは辛いしさって私も思うし。…………でも、これだけは分かってて」
「?」
「皆は別に、仲間外れしてる訳じゃないよ。ただ、二人を守りたいだけなんだよ」
「…………!」
二人の表情が…………僅かに変化した。
「…………気持ちは嬉しいですけど、私達だって、力になりたいです!」
「うん…………でも凄いことだと思わない?あの年で、大切な人を守りたいって思えるなんて、そうそう居ないと思うよ」
「…………」
「人を守るって、大変だと思うんだよね。それをツナ達はやり遂げようって、今必死になってる。そこまで出来るのって、正直凄いよ。だから…………それだけは、分かっていて欲しいな」
私が言えることじゃないと思うけどね。
私は、そう言いながら二人に微笑んだ。
京子ちゃんもハルも、最初と比べたら、毒気を抜かれたような顔をしている。目には迷いが写っていて…………どうすれば良いのか、自分に問いているようにも見えた。
「じゃあ…………どうすれば良いの?私は本当の事を知りたい。でも、ツナ君に問い詰めてもきっと教えてくれない…………。それでもユカちゃんから聞くのは、なんか駄目な気がする」
「!京子ちゃん…………」
「さーて、そこで私からの提案が一つ、あります」
私は自分の人差し指を、顔の横に持ってきた。きっと今の私の顔は、とてつもなく悪い顔になっているんだろう。その証拠に、目の前にいる二人は目を見張っている。
「私からではなく、ツナから本当の事を聞ける方法です」
「えっ」
「そんなこと…………可能なんですか!?」
「まあ賭けに出るっていった方が近いかもだけど。二人とも、耳を貸して」
「はい!」
「うん!」
にやにやにや。
頬筋が緩み、口角が上がる。
そこの人達。気持ち悪いなんて言うなよ。私だってちゃんと分かってるんだから。
私の口元に、目を輝かせて自分の耳を近付けてくる京子ちゃんとハル。私はお決まりの如く、かくかくじかじか…………と、この作戦を口にした。
「…………ってなのはどうでしょう?」
「はひっ!!その作戦、うまくいきそうな気がしますよ!」
「でも…………良いのかな、そんなことしちゃって」
「良いの良いの。これくらい」
「ふーん…………お前、結構黒いとこあんだな、ユカ」
「…………!?り…………リボーン…………」
「悪かねぇな」
信じらんない。何処から湧いてきやがったんだよ。
不安そうに瞳の中が揺れている京子ちゃんの横で、私と同じ…………いや、それ以上に口の端を上げている、リボーンの姿があった。
ちゃっかりビアンキさんに抱えられたりしちゃって。
「もしかして、今の聞いてた?」
「この耳でばっちりとな」
「リボーン君…………」
その言葉を聞いた京子ちゃんの表情が、心なしか血の気を失っていく。真面目で優等生な京子ちゃんらしい。何か言われる、そう思ったのだろう。
それを見たビアンキは、そんな京子ちゃんを安心させるかのように微笑んだ。
「私は良いと思うわ、その案。男に対抗するなら、それくらいやったって良いのよ。死ぬわけじゃあるまいし」
「死ぬってまた大袈裟な…………」
「ま、俺も賛成だな」
「本当?やった!」
二人とも、私の案に賛成の意を唱えてくれる。それを聞いた京子ちゃん達は、嬉しそうに顔を綻ばせた。
リボーンとビアンキさんさえ味方だったら
こっちのものだ。
「じゃあすぐにでも…………」
「あ、ちょっと待った!」
今すぐにでも駆け出そうとする二人。今から準備なり何なりするつもりなのだろう。でも、そんな二人を私はひき止めた。
「あくまでこの作戦は最終手段ってことにしない?」
「え?」
「いや、言い出した私が言うのはなんだけどさ。皆まだ疲れとか怪我とか直ってない人も居るし、ツナ達も話してくれないとは限らないわけだし。可能性は低いけど」
「何が言いたいんだ、ユカ?」
「えーっとね。つまり……様子見?的な?」
「言っている事が矛盾してんな」
「あはは」
私は頭の裏に手を置き、苦笑いともとれる苦しげな笑いを漏らした。
しょうがないって。私だって苦しいと思ってんだから。
本当に言い出しといてなんだが…………つまりはあれだ。その、原作が変わると言うのは怖いので、期が熟すまで待とうと、そう言うことだ。
こっちに来て結構図太くなった私の神経もそこまでカバーはされていない。本質的にはビビりな奴と言うことだ。
「…………ま、急いでやってもな」
「はひ?ハルは今にでもやりだしたいのですが…………」
「そうね。取り敢えず…………勝てる見込みがあるなら、少しでもそれを高めた方が良いわ。まずは、味方を増やすことからね」
「味方を増やす?」
「そう。出来れば、ツナ達以外がこっちにつけばそれだけやり易くなると思うわ」
「そ、そんなにハル達に味方してくれるで
しょうか…………?」
「頑張ろうね、ハルちゃん!」
…………後にユカが二人の寝泊まりしている部屋を覗くと、あるプラカードを発見したらしい。
そこに書かれていたのは、『秘密反対!!』『情報の開示を』
…………着々と準備は進んでいるようで、ユカはこっそり口角をあげた。
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