雲珠桜は夏に彩る 今まで隠してきたこと12 いつもならこの場面で、ランボがバズーカーなり手榴弾なりを頭の中から出して大騒ぎになるのだが、今回はそうはならない。何故なら、ここでは騒ぎを起こさせまいと教育係魂がついたフウ太が、全部あらかじめ取り上げてしまっているのだ。十年間で身に付いたランボの対応はここで役立っているらしい。 「白蘭は…………お前のその世界に妙に興味を示していた。ユカは自分の意思でこっちに来たわけじゃねえんだろ?」 「うん…………突然だった」 「だったら余計に腑に落ちねえ。元々向こうの住人であるユカならともかく、向こうに行く手段すらない白蘭が、どうやって手中に収めるつもりなんだ………?」 「…………」 「…………ユカ。お前、気をつけろよ」 「?」 リボーンの顔に光が宿る。鋭い光だ。何もかもを見通してしまうような…………。 今のリボーンならそれくらい、出来るのかもしれない。 「今、一番狙われているのは恐らくお前だ、ユカ。白蘭はお前に、近々接触を持つような事を言っていた」 「あ…………」 「ここに居る限り、大丈夫だと思うが…………一応気をつけておけよ」 「うん」 その言葉を重く受け止める。そして、未だ引く事のない右腕の痣に目をやった。 「関わる事って言うか…………それが今、ユカチャンがここに居る存在意義ってやつ、かな♪」 「は!?」 「ボクにとってのユカチャンはねー。例えるなら…………そう、所謂『隠しアイテム』さ!」 「フィールドはこの世界。プレーヤーはボク や綱吉クン。お宝はトゥリニセッテ。でもストーリーはただ単に進めていくのは飽きちゃうだろ?それってつまんないよね?」 「そこで使うのが『隠しアイテム』さ!ユカチャンだよ!」 「たった一人の存在でボクを楽しませる事が 出来るんだ!これって凄いことなんだよ、ユカチャン!!」 あの狂ったような叫び声は…………今でもこの耳に残っている。残っているが、声は少しずつ薄れていっている。なのに何故かこの右腕の痣は残っている。 「…………」 ある程度薄くなっていると思えばこれ以上は消えない。消えるのは時間の問題と思っていたのに、全然消える気配を見せない。 まるでそれは………… 呪縛みたいな。 「待て、白蘭!」 「あ、そうだ。ユカちゃんとはもっとゆっくり話したいからさ、今度はちゃんと向き合って会おうね♪」 そう…………呪縛みたい。そして右腕の痣はその呪縛の象徴みたいなもの。そう考えると、恐ろしく感じる。 一体この痣は、何を表わすのだろう? 本当に呪縛の象徴?それとももっと、別の意味でももつのだろうか? 「…………」 分からない。白蘭が何を考えているのか。 [*前へ][次へ#] |