雲珠桜は夏に彩る
最後は笑うだけ15
「何そんな驚いた顔してんのさ」
「いや…………朝っぱらから衝撃事実が暴露されたんで」
「…………僕だって、それくらいするさ」
む……と眉と目尻を吊り上げる雲雀さん。その顔はまるで、心外だとばかり言いたげな顔だ。
「でも、何で急に…………?」
「…………弥風が」
「弥風さん?」
私が確認するように訊ねると、雲雀さんは言葉ではなく、頷くようにして答えた。
「…………ユカにとって、何が不安なのか、何を怖がっていたのかよく分からなかった…………」
「…………雲雀さん…」
「あの後、弥風にいろいろ言われた。…………多分、言われなかったらずっと気付かずそのままだったんだろうね」
「弥風さんが?」
「うん」
一体何を弥風さんが何を言ったのか、全く想像がつかなかった。
弥風さんは考えていることが全く予想付かない。変にずれていることを考えているな、と思う時もあるし、時には心の奥を見透かされたようにドキッと来るような事を言い当てたりする。どっちにしろ、弥風さんは中心からそんなに離れた事を考えたりする人ではないと、ユカは知っていた。
でも、雲雀さんの様子を見るからに、相当堪えることを言われたと思う。こんなに雲雀さんらしくない雲雀さん…………言葉で言い表すことは難しいと思うけど、とにかくこんな雲雀さん、今まで一緒に暮らしてきて見た事がない。
雲雀さんはそのまま一字一句…………探るように言葉を見つけて話していく。
そして雲雀さんの目に、決意の光が宿った。
「…………昨日、ユカが言った…」
「?」
「…………もう、二度と僕の前で居なくなるなんて言わないで…………」
「…………それって」
「そんな事を聞くのは、嫌だ」
その言葉が心に重くのしかかった。胸の奥の辺りが何かに握りしめられるように苦しい。
何だろう…………?
思わず手を胸に押し当てて考える。
雲雀さん、そんなこと考えて…………。
…気付いた時には、熱いものが流れていた。
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