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雲珠桜は夏に彩る
最後は笑うだけ12








…………今の自分を鏡に映せない。

自然とそう思った。







そんな雲雀を見て、弥風はゆっくりと立ち上がった。もう、自分から言うことは、何もない。言いたいことも全て言い切った。後は…………本人達の問題だ。
弥風はこれ以上、力になれないことを悔やみつつ、きっと、雲雀ならば自分なりの答えを見つけ出し、そしてそれを伝えることが出来る。そう、信じていた。
信じているからこそ、弥風は顔に思いっきりの笑顔を作り、雲雀の頭に手をおいた。そして数回ポンポン、と叩き気味に何回か手をおいたあと、思いっきり頭をぐしゃぐしゃにする勢いで頭を掻き回した。







「恭!!」


「!?」


「私はいつでも、何年後でもあんた達の味方だからね!」


「…………弥風」








雲雀が開けずにいた口を、小さく開く。
雲雀の表情は残念ながら、見えない。弥風が頭を掻き回したせいで、細く綺麗な髪は絡まりあい、雲雀の鋭い光を帯びた目を覆い隠してくれている。







「弥風…………咬み殺されたいの?」







いつもより一層低くなった声には、ただならぬ気配を感じる。しかも、髪で目を隠しているため…………殺気もいつもよりキツく感じる気がした。







「おっと…………やり過ぎ?じゃ、お邪魔虫は出ていきまーす」


「(イラッ)…………弥風。大体君も人のこと言う暇あったら、結婚の1つでもしなよ。手綱をとってもらったら少しは騒がしいのが治るんじゃないのかい?」


「あら、酷いわね」


「30にもなる女がそんな態度とる方が僕には信じられないね」


「私はいつでも少女心を忘れないようにしてるのよ。…………それに!」


「?」


「私、もう彼氏いますから!」


「…………」






…………驚愕の事実だ。






「私はいつでも結婚OKなんだけど、彼がなかなか言い出してくれないのよー。シャイボーイなのよねぇ」







頬に手をあてがって頬を染める弥風。端から見れば幸せそうにのろけて見えるのだが……雲雀にとっては、気持ち悪いの一言。
取り敢えず、胡散臭そうな視線を投げ付けてみてから、何処からともなく出したトンファーを投げ付けてみる。オプションとして棘らしきものを出すことも出来るが、取り敢えずそれは出さずに投げてみた。







「わっ…………危ないわね。気を付けてよ」


「…………」








やはり、ウザい。
超絶、ウザい。



しかし、本当に幸せそうな顔をしている弥風を見て、何処と無く…………負けているような気になった雲雀だった。






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