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雲珠桜は夏に彩る
最後は笑うだけ11







「…………もしかして恭、そんときに突っぱねる様なこと、したでしょ」


「…………してない」


「したわね。そんで、ユカは悩んでいた。…………ハア」







弥風は頭に手を置く。酒が回ったのか、大分顔色が悪かった。
怪訝に思った雲雀は、嫌々体制を取りながら弥風に話し掛けた。







「弥風?」


「…………ユカは多分あんたに、傍にいて欲しかったのね」


「!?」







何を言い出すのかと思った。
弥風なりの冗談かと思った。
しかし弥風はいたって真剣だ。目と表情を見ればそれは読み取れる。








「私にはそんな事、相談してくれなかったわ。恭にその事を言ったのは、ユカなりの甘えだったのかも…………余程話すのが怖いのよ」


「なんで…………」


「それは私には分からない」






ゆっくりと首を横に振る。






「…………誰だって、未来の自分がいなくなってるって分かったら怖い。で
も、ユカはその恐怖を乗り越えてる様に見える。…………じゃあそれ以上怖いことって、何?未来に自分がいないってことより怖いことがあるの?」


「…………」


「ねえ恭。そんな怖いと思ったとき、傍にいてほしいってユカに思われてたのよ?あんた、そんなときに自分の感情を優先させなかった?」


「…………いい」


「そんなに悩んでて拒否されるような事言われたら、そりゃ感情的になると思わない?」


「言わないで…………」


「ユカ…………どんな顔してた?」


「もういい!」







思わず、トンファーを畳に叩きつけた。
布団越しというのに、トンファーの落ちた場所はクレーターのようにへこみ、熱を帯びている。



…………ユカがどんな顔をしていたか、だって?





『知らない』





…………何で?





『自分から、ユカから顔を背けていたから』






自分の弱い部分を見せたくなかった。そう言えば格好はつくのだろうか?
しかし実際は、自分から顔を背けて、ユカの気持ちに気づいてあげられていないだけ。それどころか、八つ当たりのようなことまで言った。
…………自分は何て言った?








「…………何でそんなに怒るの。怒るような事かい?」



「なら僕はもう何も言わなくていいね」



「何も言わないし何もしない。勝手に一人で悩んでいたらいいさ」







「そんな事、僕に関係ない」









言葉を思い出すだけで、頭を殴りたくなる。
何が関係無い、だ。何が勝手に悩め、だ。


僕は一体何様だ?







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