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雲珠桜は夏に彩る
最後は笑うだけ08








「…………何でそんなに怒るの。怒るような事かい?」







1オクターブ低い声で、雲雀さんが私に問う。その声は、まるで自分もキレていることをアピールするかの口調だった。


…………そうだよ。キレるほどの事だったんだよ。何で分かってくれないの?








「…………雲雀さんに…………分かってもらえなくても良いです」




分かってほしい。




「もう…………自分で考えます」




聞いてほしい。




「だって…………無関係、ですもんね」








いつからこんなに自分はひねくれてしまったのだろう?心の声と言ってる事が全然違う。
一回紡いだ言葉は取り消せない。それが分かっているのに、久し振りに感情を爆発させたせいか、言わなくて良いことまで言ってしまう。止めたくても止められなかった。最後の方も八つ当たりのように聞こえる。


…………何でこんな風になるんだ。


こんな自分をとにかく呪いたくなった。
もう、何が言いたいのかすら見当がつかなくなってきていて…………。

まるで、自分の醜さを見たくがないためにぎゅっと目を閉じたとき…………今までに聞いたことがないような、冷たい声が私に降り注いだ。






「ああ、そう」


「…………?」









雲雀さんがこちらを向く。
黒髪の間をくぐって見えたその瞳は鋭くつり上がっていて、私を射抜いていた。









「なら僕はもう何も言わなくていいね」


「何も言わないし何もしない。勝手に一人で悩んでいたらいいさ」


「!」








そこからはほぼ反射だった。一瞬だった。

私は弥風さんの頭を置いていた枕を掴み取って腕を振り降ろした。勿論枕は雲雀さんの顔を目掛けて飛んでいく。
こんな至近距離だ。ユカのコントロールはけして悪くないし、普通なら当たって当然だった。
だが、そこは流石と言うべきか。雲雀さんは自分の腕を盾代わりとして、腕を自分の前に立てて枕を回避し、弥風さんの頭の上に落とした。

お互いに、弥風さんの頭が枕という支えをなくして地面に落ちたことや、雲雀さんが枕を弥風さんの頭の上に落とした時に『ふぎゃっ』と聞こえたことは、当然聞こえていない。

枕を投げた後の私は、いろんな意味で顔を上げることが出来なくて、そのまま膝に顔を埋めた。
















「……………………ばか」









小さく、聞こえるか聞こえないかぐらいの声だった。

その日、それ以上ユカが喋ることは無かった。

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