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雲珠桜は夏に彩る 最後は笑うだけ07 「それに…………」 こちらを向いていない雲雀さんの背に、私は静かに話しかける。聴いてくれているのかは分からない。……弥風さんに掴まれて動けないこの距離がなんだか、実際の長さより遠く感じた。 伸ばせば届くはずの背も、今は届かないような気がした。 「私…………未来は行方不明らしいんですよね！それって帰っちゃってるってことでしょ？なら…………少しでも話していた方が居なくなったときに分かってもらえると思うし…………」 ビュン…………。 『居なくなる』 この言葉を発したとき、私の喉の周りが異様に涼しく感じた。 「…………え？」 「黙ってよ。…………そんな言葉聞きたくない」 居なくなるなんて。 雲雀さんはそのあと確かにそう呟いた。でも、不幸にもその言葉はユカの耳には届いてはいなかった。 自分の首の周りをトンファーで狙われた。 そう理解して、ユカの頭には青筋が浮かんだ。 「…………『そんな』って？私、これでも必死に考えてるんですよ？」 「別に考える必要ない」 「だからあるんですって！じゃなきゃこんなに悩みません！」 「そんな事、僕に関係ない」 「関係ない…………！？」 その言葉がユカの理性を切らせた。 「……そうですよね。関係無いですよね」 「…………ユカ？」 「すいませんでした！無関係な雲雀さんに相談したのが間違いでした！」 「…………何それ」 「もう良いです、自分の事はやっぱり自分で何とかします。雲雀さんに頼らないようにするんで安心してください。さっきのことも忘れてください！」 歯止めが効かなかった。 ムカついた………と言うより、悲しかった。 別に雲雀さんにどうこうしてもらおうとか考えてないしするつもりもない。ただ…………話を聞いてもらって、そこで頷いてくれるだけでも全然構わなかった。 私が皆に話している時、側に、目に入る位置に居てくれる、それだけで。 私にとって、皆に話すと言う行為は思った以上に心に負担をかける事だった。でも雲雀さんにとっては『そんな事』なのだ。その程度の問題なのだ。 雲雀さんには無関係だった。 私は何を期待していたのだろう？ 慰め？ 励まし？ 同情？ 「下らないことを相談して、すいませんでした！」 ただ明日の事が不安で、雲雀さんからなんでも良い。何か言葉をもらって励みにしたかった自分がいる。 そんな事を考えていた私は、自分が恥ずかしくて惨めにも愚かにも見えて…………思わず自分の顔を隠したくなった。 今度は私が雲雀さんから顔を背ける番だ。 …………明日の事を考えると、物凄く不安。でも、無関係って言われてもっと不安が大きくなった。 ［*前へ］［次へ#］  |