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雲珠桜は夏に彩る
最後は笑うだけ06








静寂な空間…………。

聞こえてくるものは私達の呼吸音と、弥風さんの小さな寝息だけ。私達二人はしばらく静かにこの一時をのんびりと過ごしていた。
何かをするわけではなく、ポツリポツリと会話はたまにしては無言になる。その静けさを味わっていた。

そんな時間を繰り返していると…………ふと、ユカの頭に浮かんだ事があった。思い出した、という表現の方が近いのかもしれない。





明日のこと。





リボーンに、私の全てを話すことを約束した。トリップしてきたことなど、今まで隠しきたことを全部。

…………別に話すことが嫌なわけではない。非力な自分でも、それが白蘭を倒す上で役に立つのなら、キチンと話したい。ただえさえ、白蘭に目をつけられたようなことを言われてしまい、これから迷惑をかけることもあるかもしれないのだ。それに、これは皆の側に居れば、必ずしもいつかは言わなくてはいけなかった事であって。
ここへ来て隠し事なんて、フェアじゃない…………そう思うのだが。

やはり、今まで隠してきたことを話すと言うのは色々と勇気がいる。この状況になって初めてそう学んだ。

…………そうだ。








「あの、雲雀さん」


「何」


「雲雀さん…………私の事、何処まで話してましたっけ?」


「…………何、いきなり」


「いや…………確か、私がどこからきたかは話してたような気がするんですけど、どこくらいまで話したかは覚えてなくて。………あれ?初めて会った時、話しましたよね?」


「…………別の、世界とやらだろう?」


「そうです、それ」








やはり、雲雀さんには話していた。雲雀さんがその事を知っていてくれてるというだけで、幾分か心の重荷が降りている気がする。そんな雲雀さんの存在は偉大だ。
と言うか、ちゃんと私の事を覚えておいてくれたんだ。

これで「何それ?」とか真顔で言われてたらショックだなーと思いながら、雲雀さんの方を見た。
…………雲雀さんはなぜか、そっぽを向いてしまっていた。








「雲雀さん?」


「何でそんなこと聞くの」


「…………明日、皆に言おうと思って」


「…………」


「出来れば…………雲雀さんも一緒に来て聞いててほしいなっていうか」







私が明日、ボンゴレ基地の皆の前で明かすことにしたと、詳しく言った。
その時、何故か周りの空気の温度が、急激に下がっていくような感覚に襲われた。
…………原因は、雲雀さんだった。







「言っておくけど僕、行かないよ」


「え」


「どうせ群れるだけなんだろう?そんな所に僕は行かない」


「え、どうせって…………結構私にとって重大な告白なんですけど」


「…………なら、しなければ良い」








雲雀さんは完全に私から背を向けていた。私からはもうあの整った顔は見えていなくて、見えているのは私を何度も助けてくれた逞しい背中と、綺麗に流れる漆黒の髪だけだった。雲雀さんが私に背を向けどんな表情を顔の上で作っているかなんて想像も付かない。



「しない訳には…………いきませんよ。あの人が出てきちゃったんだから」



私は笑う。
その笑顔は…………自分だけではなく、見ている人全ての顔を歪めさせるようなそんな笑みだった。痛々しい。その笑顔をみた人は皆口を揃えてそう言うに違いない。

…………あの人の事を思い出したから。



白蘭。


その存在と目的は、私にとっていいほうには進んではくれなかった。きっと白蘭はこの世界を手にした後、私の世界まで手を伸ばす気だろう。しかも、退屈しのぎとして。

白蘭は言った。私は『隠しアイテム』なのだと。勿論そんなものになる気はないし、そんなものが自分の存在価値だとか思ってはいない。私に自分の世界が守れるか、守るかっていったら、そんなことは出来ないと答える。だって、私には守る力なんてそんな凄いもの持っているわけがないのだから。
ただ、私がきっかけとなるなら、そのきっかけを自分のできる限り、精一杯白蘭から守ればいい。そう思っていた。
そしてだからこそ、敵となる者の情報は多く集めておきたいと思うリボーンの気持ちは分かるし、私の知っていることなら与えたいとも思う。だから話しておきたい。

ずっとそう思っていた。









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あきゅろす。
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