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雲珠桜は夏に彩る
最後は笑うだけ








ペタ、ペタと自分の足音だけが大きく廊下に響き渡る。私はその音に耳を澄ましながら、風紀財団までの廊下を一人、歩いていた。








「…………はあ、なんか疲れた」







気分は、このまま床にぶっ倒れて寝たい。なんなら、このまま立って寝てもいい。枕がないと寝れないとか、布団さえあれば寝れるという人と違って、私は本当にここで寝ることが出来る。そう言いきる自信がある。…………そりゃ、布団があることに越したことはないけど。




大人リボーンの笑みを見たことで出てきた赤面顔は随分引いた。今、顔に出ているのは恐らく疲れのみ。ここに来るまで誰にも会わなくて、本当によかった。切実にそう思った。

ボンゴレ日本基地と風紀財団を繋ぐドアが私の目の前で見える。
ドアの前で私は立ち止まると、ドアの横にあるロックを教えてもらったように解く。この解除の仕方を知っている人は制約上、ほんの数人。その中の一人に入れたことが私にとって嬉しいことで、気を抜いて頬が緩まないよう気を付けた。

解錠の音がカチャリとする。
ドアは全自動なので、下に立ってた私を感知して、滑らかな動きで開いた。








「やっぱり凄い…………」








ドアが開けた途端、目の前に広がる和の風景。何処か基地を思わせるような作りだが…………やはり今は見慣れないせいか、ここに立つ度、開いた口が閉じてはくれない。
しかし、そこにずっと立ち止まるのもなんなので、ゆっくりと足を前に踏み出した。








「あ、草壁さん」


「笠原…………」







ゆっくりと歩いていると、向こうから疲れが滲み出ている草壁さんが歩いてきた。
最初は違和感が酷すぎて戸惑っていた十年後のこの姿にも、今は大分慣れていた。








「…………大丈夫ですか?物凄く疲れているように見えますけど」


「そうか?」


「はい」


「…………だが、笠原も人のこと言えてないぞ」








ほれ、と小さな鏡を差し出される。なんでこんなもの持っているかは別としておこう。きっと、いつでもリーゼントを整えられるよう、持ち歩いているのだ。うん。
そう思いながら、差し出された小さな鏡を覗き込む。そこには、今にも瞼が落ちそうな自分が写っていた。


…………物凄く酷い顔。








「…………確かに」








私は草壁さんから鏡を受けとる。
取り敢えず見た目だけでもどうにか誤魔化せないかと、頬をつねったり軽く叩いたり…………現状はそう簡単には変わってくれなかった。








「あ、そうだ草壁さん」








私はこの顔をどうにかすることを諦め、草壁さんに鏡を差し出す。
どうせ疲労から来ているのは分かっている。一晩寝ればどうにでもなるだろう。







「なんだ?」


「雲雀さんって今、部屋にいます?」


「?いることにはいるが…………」








草壁さんは少し表情を曇らせて言う。








「あ、もう寝てますか?」


「…………いや、是非行ってやってくれ」









あの奥の角を曲がればすぐ分かる、と、指で指して教えてくれた。
草壁さんの言葉が引っ掛かるのだか…………気のせいだろうか?心なしか暗いオーラを背負ってるようにも見えるし。
そんなに疲れているのか?

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