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雲珠桜は夏に彩る
悩める者達06








パタン…………と後ろの手でドアを閉める。

騒ぎに騒いだ夕食。時計が9時を回ったのを見届けて、私は退出させてもらった。
そろそろこの熱気から離れて一人になりたい…………そう思ってのことだった。

ドアの前で少し佇む。廊下の冷たい風と静けさが、私の火照って紅くリンゴのように染まってしまった頬を、ゆっくりと冷ましてくれている気がした。
こんなに静かなの…………久しぶりかもしれない。







「……この後どうするんだ?ユカ」


「!リボーン…………いつからそこに?」


「ちょっと前から、な」








呼ばれる声に導かれて、そのまま視線を下に降ろしていく。そこには、ボルサリーノを深く被り、顔の表情を巧い具合に隠しているちっちゃな赤ん坊がいた。
この人は唐突なんて当たり前。そう分かってたつもりなのに、こうもタイミング悪い時に現れられるともう苦笑しか出てこない。



自分より遥かに小さな赤ん坊の姿。
呪いにかけられる前を知っている私。
その二つを想像で補いながら比べてみると、あまりにも違いすぎて…………。





見た目が違う。


背丈が違う。


視線が違う。


印象が違う。


纏っている雰囲気が違う。


違わないのなんて中身だけ。





人間、中身とかよく聞くが、実際に最初は見た目を見られるもの。第一位印象は大切だ。

私はそこまで考えると…………無意識にこの言葉がポロっと出てしまった。








「その姿ってさ…………辛くならない?」


「…………質問してるのは俺が先だぞ」


「あ…………ごめん」








言葉を発してから、しまったと口を閉じる。
聞いた直後のリボーンの雰囲気が、一瞬変わった。
けして険悪な雰囲気…………ではなかったと、感じた限りでは思う。
どっちかと言うと、驚きと、傷を抉られた時の感情を足して割ったかのような…………。
よく分からないがそんな感じ。
触れてほしくないような、そんな。

私は、タブー(禁句)に触れてしまったのだと感じた。
それもそうだろう。
そんな姿になることを望んでなる奴なんてそうそういないだろうし、今まで歩んできたことが無になるようなそんな姿にされて、辛くない訳がない。
ましてやそんなこと、他人に聞かれたくなんてないはずだ。自分の弱みを見せるような真似…………ましてや高く誇り高いであろうプライドを持つ、リボーンなら。

考えが浅かった…………と、リボーンから目をそらし、俯いた。







「…………」








でも…………それでも思う。



辛くないのか。



周りで、元の姿とこの姿を知っている人なんて、それこそ数えられるくらいなんではないだろうか?リボーンは凄腕のヒットマン。職業柄元の姿を曝すなんてそうそうしなかったはずだし…………。

こんな大きな秘密を一人で抱えて、周りからは赤ん坊とみなされ赤ん坊として扱われ…………自分は赤ん坊じゃないと叫びたくなるときはないのだろうか?


そこまで考えた時。…………リボーンがこちらを見た。







「ユカ、お前今日こっちに泊るのか?」


「え………ううん、草壁さんが風紀財団の基地のほうに泊りに来ないかって。弥風さんもいるし、雲雀さんも帰ってきたみたいだし」


「雲雀、連れ戻せたのか」


「うん。相当苦労したみたいだよ、草壁さん」


「そうか、じゃあユカ。向こうに戻る前に話、ちょっといいか?」


「え?うん」


「ここじゃなんだから別の階でいいか?」


「わかった」







私は快く、首を縦に振った。

リボーンが歩きだすことで進みだす私達。
私は、この基地の事はまだよく把握しきれてはいない。分かるのはさっき弥風さんに教えてもらった、風紀財団の行き方ぐらいだろうか?今はないだろうが、はぐれたら迷子になる可能性は極めて高い。
私は周りを見ながら道を覚えつつ、リボーンの後を追った。







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あきゅろす。
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