みつめてナイト フォローストーリー 〜疾風のネクセラリア編〜 夏至際も終わって数日が過ぎた。 珍しくハジメの部屋で談笑する。 「そう言えば教会の神父が水死体で見つかったってなぁ。」 「もうすぐ後任の神父様がスィーズランドからやってくるんだって。」 「雰囲気の良い人だと助かるんだが・・・。なぁ、ハジメ。」 ゲームをしていただくとわかるのですが、教会ではあまりかまってない女の娘の傷心度をお祈りすることによって、下げることができるのです。 少しだけふくれて、ハジメは話題を変えた。 「ねぇねぇ、そう言えばさぁ、僕たちがこの国に来てからもう4ヶ月になるけど攻めてくる様子無いんだね。」 「まぁな、戦争って言ってもそんなに頻繁に戦争なんてできないよ。1回の戦闘でかなりの物資を使うことになるんだから。」 「せっかく傭兵になったけど、このまま戦争なしで、永住権もらえたら良いのにね。」 「そうだと良いんだが、まぁ、そんなに上手くは行かないさ。」 その頃、渋い顔をしたヤング大尉が食後のコーヒーを飲んでいる。 「あなた、どうかなさいましたの?怖い顔をなさっているわ。」 「ん、あぁ、そうか。」 「まさか、そろそろ戦争が起こるのかもしれないんですの?」 「あぁ、6/25にヴァルファへ、最終勧告を行ったそうだ。奴らのことだからきっと近いうちに攻めてくるんじゃないかな。」 「あなた・・・。私心配なんですの。ヴァルファって言えば・・・。」 「そう、その先は言うな、奴がきっと先陣で現われるだろう。その異名のごとくな。」 「私心配なの、以前はあなたが顔の傷と引き換えに何とか勝利を収めましたけど、今度はどうなるか・・・。」 「大丈夫だ。心配するな。まだまだ奴には負けはせんよ」 クレアを安心させようとしてなのかはっはっはと笑いながら、席を立ち寝室へと向かった。 「ネクセラリア・・・。私をヤングと奪い合った人・・・。」 女性と言うこともあってか嫉妬の恐ろしさを知るクレアにとって、ヤングの気遣いさえも無駄なものになったようだった。 次の日、訓練所にて 「いいかぁ!あまえらぁ、ダナンを攻略することが決まった。出発予定は今から2週間後、相手は有名な傭兵集団、ヴァルファ=バラハリアンだ!!功を立て名を惜しめよ!!!」 「なんと言うか、指揮官の最後のせりふはなんとまぁ陳腐なものになるのだな。」 「何変なところで感心しているのさぁ。」 「いや、何、昔を少し思い出しただけだよ。」 「ふぅん、でもさぁ、やっと功績を残せるね。」 「さぁて、どうだか・・・。強いって言われても、実際どれだけ強いのかわからないから、ある意味では楽しみだな。」 「とか言ってさぁ、好きな人でもできたんじゃない?ははははは」 「こいつ、いつものお返しのつもりか?」 「そんなことないよ〜〜〜だぁ、僕はもっと言われつづけてるからほんの1部返しただけだよ〜〜〜〜。」 ハジメの声が小さくなって行く。 その光景を見ていたヤングは 「あいつらだけは殺させたくないな、戦争を前にあんなにも明るく振舞えるとは。さて、おれも、しっかり鍛えておかないとな、クレアを悲しませるわけにはいかなからな。」 7/14の夜 食事が終わり、さすがに緊張した面持ちでヤングが席を立つ。 「すまないクレア、明日は早いから、もう寝させてもらうぞ。」 はっとクレアが背中にしがみつき。やっと、やっとの一言をしぼりだす。 「あなた・・・。生きて戻っていらしてね。おいしいお酒用意しておきますから。」 ヤングは振り向き悲しそうな顔をしているクレアに向かってキスをする。 「!?」 「そんなに暗い顔してどうする。俺はおまえが笑っている顔の方が好きだ。明日は笑って見送ってくれよ。」 にこにこしながらヤングは寝室へとさがっていった。 (えぇ、明日は笑って見送ってさしあげますわ、でも、でも、今回だけはとっても不安なの・・・。) ドルファン軍は国境都市ダナンを奪回すべく、騎士団を派遣した。一方、プロキアの撤退要求を無視したヴァルファ=バラハリアンは、ダナン南方の旧軍事地区イリハに布陣した。 「ハハハハハハ。ジョアン・エリータス参上!フッ・・・傭兵は哀しいな。このボクの様に生まれついての騎士であったら君らみたいに捨石にはならないものを、ま、せいぜい頑張って戦場で死にたまえ、その間に僕が華麗に敵を打ち破って見せようじゃないかハッハッハ」 「馬上から何ほざいてるんだか。」 「そうだね、だって、手綱持ったままだよ、彼。」 「ふぅ、傭兵を雇っている意味がようやくわかった気がする・・・。あんまり当てにはできないってことだな。」 「大丈夫だよ。僕たち2人がそろっていればね」 緊張感を持っているはずでも、にこにこできるところは尊敬に値する。もしハジメが敵の大将だったら、相手にせずにさっさと引き払ったほうが良いのかもしれない。 戦争はどうやら押されているようだ。機動力によるかく乱作戦にまんまと正規の騎士団がはまってしまったらしい。混戦になる中、ヤングのところに伝令がやってくる。 「なにぃ!!『前線で踏みとどまり、自軍の陣形が整うまで奮戦せよ』だと!!、われわれに死ねと言うのか、騎士団は!!」 「では、これで、司令部へ帰還します。」 伝令が消えた後、ヤングは「踏みとどまれ」と言う指令を伝えた 「結構こき使ってくれる国だな、ここは。」 思わず苦笑する。 「まだここは大丈夫なんだけどね。」 コンビネーションはばっちり決まって、今のところ怪我らしい怪我をせずにいる。 「さて、そろそろかな?」 ハジメと目配せをする。それを合図に敵陣にたった二人で斬り込んで行く。 ものすごい勢いで、兵士をなぎ倒し、混乱に陥れた。 虚を突かれた敵は陣形を立て直すために後退して行った。 「さて、不利な戦場はっと・・・。!?ヤング大尉独りで守っているぞ!!どうやら、先陣の中心部隊が突入をしているようだ。行くぞっ!ハジメ!!」 「うん、急ごう!!」 「聴け、ドルファンの犬ども!我が名は疾風のネクセラリア!我が槍に挑まんとする勇者はここにはいないのか?」 「ネクセラリア!この俺が相手をしよう!!」 「ヤング・マジョラム大尉か・・・ハンガリアの狼が、今やドルファンの1部隊長とはな面白い・・・ハンガリア時代の決着を今日ここでつけてやる!!」 切り結ぶものの、槍の間合いになかなか飛び込むことができない。 「ふっ、平和の中で腕が落ちたかヤング、これで終わりだぁぁぁっ!!」 「ぐおぉぉ・・・」 「ヤングよ冥土で逢おう・・・」 「ク・・・クレア・・・すまん・・・。」 どさりとヤングの体が崩れ落ちる。 ヤング邸 「!?」 クレアが皿を落とした。 「ま、まさか・・・あなた・・・。」 かすかに、しかしはっきりとクレアは耳にした。 「おいしいお酒は飲めそうにない、墓にでもかけてくれ。クレア、おまえを置いていって申し訳ない・・・。」 「くぅぅっ、あなたぁぁぁぁ・・・・・・・」 クレアはその場に泣き崩れ、部屋の中にすすり泣く声だけがその日1日中続いた・・・。 戦場 「ヤングは我が槍で討ち取った。!誰か仇を討つものはいないのか?受けてたつぞ!!」 「くそっ!間に合わなかったか!!ハジメは部隊を指揮している副隊長を頼む!!こっちは俺がやる!!」 「わかった、くれぐれも死なないでね。」 「おう!」 ハジメは部隊の中の指揮官の方へ向けて走り去った。 「ほう、あまり見たことも無い剣技のようだな、しかしこの間合いではな!!」 「そうかな、では、かかってこいよ遠慮せずに!」 「はぁぁぁぁぁっ!!」 ネクセラリアが繰り出す突きを紙一重でかわし、最後の突きを太刀で一閃し、切り払いで、槍の軌道を変えた。 「ばっ馬鹿なぁっ!!」 「今だぁぁぁ!!」 がら空きになったネクセラリアの右わき腹の鎧の継ぎ目を狙い斬る!! 「ヤポンの剣術には切り払うと言う術があるのだ。重い鎧がそんなに必要なわけではない!!」 「そうだったのか・・・。異国の剣術を知らぬこの俺の未熟さか・・・。ヤングよ・・・良い部下を持ったな・・・。」 イリハ会戦は終始機動力で勝っていた、ヴァルファ・バラハリアンの勝利に終わった。 しかしプロキアの背反が気になるのかヴァルファ・バラハリアンはダナンに後退し、それ以上進軍しようとはしなかった。かろうじてドルファンは危機を回避することができたのである。 「死んじゃったね、たくさん。」 「あぁ、まさかヤング大尉までもがやられるとは。」 「でもさっ、一応ドルファン守ったしやれるだけやったよね。」 「うん、そうだな・・・。しかし、正規騎士団のふがいなさと言ったら・・・。」 「しょうがないよ、だってそれだから傭兵募集していたんだし。」 「そうだな、よし、今日は敵の大将討ち取った記念に、ソフィアちゃん連れて夕食でも食べに行くか。」 「うん、高いもの頼むから覚悟しておいてね。」 にこにこした顔でハジメは言う。 「おいおい、まだ給料は上がってないんだから勘弁してくれよ。」 明るく振舞おうとしていてもいつものように振舞えない俺たちがいた。 心にぽっかりと穴があいたような・・・。 連載第6話です。クレアさ〜〜ん(T_T)ヤング夫妻の最後の晩餐・・・うるうるうる・・次回は、ちょっとお休みって感じの今回と対照的に明るい(それとも「あ、軽い」かな?(爆))ムード♪プリシラ様登場♪作者の萌えの方もでてくる日も遠くないですね〜(謎爆) 第 [戻る] |