2次創作 終わらない夜 『時間とは残酷で理不尽なものだ。痛みや悲しみを過去のものへと変換してしまう。 今が幸せならば何も考えずに済むだろう、しかし、日常の何気ないことに幸せを感じるのは難しい。 幸せとは失われた時に初めて気がつくものなのだから・・・私の名前は、レミリア・スカーレット、500年を生きる吸血鬼。』 「どうしたんですか?難しい顔をなさって・・」 咲夜の声でようやく我に返った。 「別に・・・なんでもないわ、少し考え事をしていただけ・・」 月明かりに照らされた大広間には、紅茶の香りだけが、静寂をかき消していた。 「私でよろしければ、力になりますが・・」 「平気よ。下らないことを考えていただけだから」 私は、淡々と咲夜に言った。 「そうですか?・・・ところで、今日の紅茶はいかがですか?」 咲夜は、一瞬、落ち込んだようにみえたが気のせいだろうか 「悪くないわ、ちょっと熱いけど・・」 「申し訳ありません。すぐに、淹れなおします」 「いいわ、夜は永いから・・・」 不思議と笑みがこぼれていた。 私は、おそらく幸せを感じていたのだろう。 毎日私の周りには、咲夜がいて、パチュリーがいる、ごくあたり前のように・・・。そして私には、フランドール、フランがいた。 「おはよう、レミィ」 噂をすればパチュリーが来た。 「珍しいですね。パチュリー様がこちらに来られるなんて、すぐにお茶をご用意します。」 「ありがとう、咲夜」 パチュリーは、大きな本を抱えて、席に座った。 「おはよう、パチュリー。今夜の月も紅くてきれいね・・・」 「そうね、怖いくらいにね」 他愛もない事を話てると、咲夜が紅茶を持ってきた。 「お待たせいたしました。パチュリー様」 「ありがとう」 パチュリーは、紅茶を飲みながら、本を読んでいる。 「そういえば、フラン様は、お呼びしなくてもいいのですか?」 「いいのよフランは・・・」 「かしこまりました。では、お茶をお持ちしますね。」 そう言って、咲夜は、部屋から出て行った。 しばらくの間、静寂が続いた。 「パチュリー、何か用件があるのでしょう?」 私が静寂を破った。 「ええ、察しがいいのね」 パチュリーは、やや俯き気味の口調で続けた。 「この幻想郷に人間が来たの、つい先日のことだけど・・・」 人間と言う言葉に反応したが、平静を装いつつ聴いた。 「その人間は博麗 霊夢というらしいの、妖怪退治を生業としているらしいわ」 「だから、何、何がいいたいの!?」 私は、席から立ち上がっていた。 「落ちついて、レミィ、おそらくその人間は、気づい てしまったのね。この地下に眠る妹様に・・・」 私は、目の前が真っ暗になるような錯覚を覚えた、夢であってほしいとさえ思った。 「どういうこと?なんでフランのことが、人間にばれたの?」 パチュリーに問い詰めた。 「私はこの屋敷全体に結界魔法を施してきたから、外の妖怪達には妹様のことは、ばれなかったけど、元々、妹様には計り知れないほどの魔力が蓄えられている。 おそらく、勘の鋭いその人間は、妹様の微量の魔力を感知したのでしょうね」 フランは、とても優しい子だったが、あの日以来変わってしまった。 だが、それでも愛する妹のため、私は、フランを地下で匿ってきた。 「その人間が、ここに来るというの?」 やや興奮気味の私に少し驚きながら、パチュリーは、答えた。 「ええ、3日後には、この屋敷に来るでしょうね」 絶望に打ちひしがれる間もなく、私は、決断していた。 「わかったわ、その人間を殺せばいいだけでしょう!・・簡単なことよ。」 「レミィ、あなたがなぜ幻想郷に来たのか忘れたわけではないでしょう?」 「大丈夫よ・・・、今は、そんな事を言っている場合じゃないわ」 すると、パチュリーに手を握られた。 「レミィ、大丈夫、私達がついているから!!」 自分では気付かなかったが、手が震えていたらしい。 「パチュリー・・ありがとう・・・」 気付いたら、パチュリーの胸で泣いていた。 (何があっても絶対にフランを護る) 大粒の雫が外の光を反射していた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |