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体内をもうひとめぐり(マツバ)




胸の中がいがいがする。苦しくて苦しくてたまらない。でもいつも緩くてすぐ涙を零す涙腺はこういう時に限って機能してくれないから私はどこまでもからからのままだ。きっかけがないからか心は雑然としたまま私の精神状態は低下していく。どうしてこんなに辛く苦しい思いをしてるんだろう。涙にして流してしまいたいけど瞳が濡れることがあっても零れる事はなかった。独りになると本当に苦しい。今も部屋の隅でうずくまって自己嫌悪に陥る。誰か、助けて。呟いた叫びは空気に混ざって再び私に取り込まれる。蓄積されるばかりの苦しみに、いっそ消えてしまいたいと思った時インターホンが鳴った。直ぐに立ち上がり玄関の扉を開ける。扉の前に立っていたのはマツバだった。思いがけない相手に目をしばたかせる。「こんばんは。この前ゲーム忘れてったから持ってきたんだよ。」「あ、ありがとう」ああやっぱりマツバは優しい。「どういたしまして。それにしても部屋真っ暗だけど今何してたの?」マツバが部屋の奥を覗き込みながら言った。「え、寝てたんだ。それよりちょっとあがってかない?」「いいのかい?それじゃあお邪魔するよ」独りだと辛いから、誰かにいて欲しかった。


テレビをつけてマツバとたわいのない話をしていたら少し気持ちが楽になった気がした。ミナキの話でひとしきり笑ったあと刹那静寂が訪れる。次の話題を模索しているとマツバが小さく私の名前を呼んだ。「なに?」マツバの目が私を見つめた。「最近なまえは辛そうだ」辛そう、辛い。そのワードに苦しさがじわじわ蘇る。「何かあったのかい?」優しく諭すような声に堰を切ったように不安と不満が口から出てくる。段々と嗚咽が混じり涙が溢れ出した。話終える頃には私の顔は涙やら鼻水やらでぐしゃぐしゃだったのをマツバがティッシュで顔を綺麗に拭いてくれた。でも、さっきまでの邪魔な嫌な気持ちはだいぶすっきりした。マツバが再び真剣な眼差しで私を見つめる。すみれ色の穏やかな瞳。「助けになるかはわからないけど、また辛くなったら僕に話してよ」そして微笑んだマツバの顔にあと一週間は頑張れそうだな、なんて思った。





あきゅろす。
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