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砂糖漬けの菓子折りと、(ダイゴ)





ピカチュウがこんなに必死にかみなりを覚えたがっているのを見て誰が断れるだろうか。直視できないほどのうるうるアイを感じつつ私としても「ピカチュウ、かみなり!」なんて言ってみたいなぁと思い一つ技を忘れさせてしまった。途端に、あたりは暗闇につつまれた。


「ピカチュウどうしよう…」ぢゅう、と鳴くピカチュウを強く抱きしめながら自分も泣きそうになる。愛しのピカチュウの推しと脳内妄想に負けてかみなりを覚えさせるためにフラッシュを忘れさせてしまった。

明かりが消え真っ暗になった洞窟内は怪物の体内みたいだと思う。あちらこちらから微かに音が聞こえてくる。真っ暗で道もわからないから帰りようもない。あぁこういうの墨を零したようなっていうのか。

どうしよう誰か助けて、と墨の中電波を送る。しかしここは一般人立ち入り禁止の洞窟だからそうそう人は入ってこない。あぁ私ここで餓死するのかな、いや凍死かな、ピカチュウは助かるといいな。すると尖った耳をぴくぴくさせていたピカチュウが私の腕からすり抜けて暗闇の中へ走っていってしまった。

「待ってピカチュウ!」泣き叫んだ声が洞窟内で反響する。待って待って待って。私の心の声が聞こえたんだろうか。暗闇にひとりぼっちという現実に恐怖がのしかかる。くらいこわいくらいこわいくらいこわい、うずくまって迷子の子どもみたいに泣いた。実際迷子か。さっき考えた事が再び頭によぎる。孤独死なんて私と関係ないと思ってた。

「なまえ?」聞き覚えのある声がする。幻聴かな、と思ったけど辺りが白っぽい光に包まれている。ヒトダマだったらおわたなと顔を上げるとダイゴさんがいた。「ダイゴ、さん」助かったあの電波は伝わったんだと安堵の涙が溢れる。ぴかぁとピカチュウがどや顔で私を見上げていた。どうやらピカチュウがダイゴさんを連れてきてくれたらしい。あぁよかった孤独死じゃない。「孫に囲まれて死ねるんですねえええうぅう」かがんだダイゴさんにぎゅっと抱きしめられ頭をよしよしと撫でられる。「それにしてもどうしてフラッシュなしでこの洞窟に?」「ピカチュウにかみなり覚えさせるのに忘れさせちゃって」「うっかりさんだね」くすくすと笑われ我ながらだいぶまぬけだなと恥ずかしくなった。「じゃぁいこうか」

立ち上がったダイゴさんに差し出された手を掴んで立ち上がる。力入んなくて立てないかなと思ったけどあっさり立てた。手をひかれて洞窟の出口へ向かう。まったくダイゴさんは命の恩人だ。今度何かお礼をしようとか考えているとダイゴさんが思い出したように「あ、そうだ」と呟いた。「さっきのことなまえを看取るのは僕たちの孫でいいよね?」にっこり笑っているけどいいよね?にやけに力が入っていた。お礼、何を渡そう。






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