THANKS
K‐志信SIDE


会場である体育館は、見たことも無いような盛り上がりようで、正直怖い。

でもすぐ目の前の席に、然の姿を見つけて安心した。

男の女装なんか見て、何が楽しいのかわからないけど、隣にいる春日部くんを見れば納得できる。

…ものすごく可愛い。

男の子だとわかってはいるけど、ドキドキするような短いスカート。
つい自分のことは忘れて、隣を凝視してしまって、ふと我に返る。

…然も春日部君に釘付けだったらどうしよう。

そっと客席へと視線を戻すと、バッチリ然と目が合って微笑まれてしまった。

よかった。

然はちゃんと俺を見ててくれた。
こんな格好だけど、然が楽しそうだから嬉しい。

自然とゆるむ頬。
ニコニコしている然に俺も思わず笑顔になる。

すると会場の舞台が揺れそうなほどの雄叫びが。

何?何が起きたんだ?

然の方しか見ていなかったから訳がわからない。

「うっわ、スゴッ。大葉見た今の!!」
「春日部といい、ちょっとマズイな…。」

無意識なのか、芹沢君はまだ春日部君のスカートの裾を握っていて、それを春日部君が必死に押さえている様にはドキドキさせるものがある。
それに誘われるようにステージに寄って来る生徒も、一人がそうすると一気に増えた。

「これはちょっと…、マズイね。柊君っ。」
「そっすね。行きましょうか!」

然と柊君も席を素早く立ち、ヒラリとステージに昇った。
春日部君の名を呼んで、柊くんは彼のスカートを押さえながら肩に担ぐ。

あ、と思う間もなく、

「「春日部弘樹、真木志信、棄権しま〜っす☆」」

気がついたら俺も然に抱かれてステージの袖へとはけ、そのまま裏口から外へと連れ出されていた。



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