THANKS
D
「キミ、上手いね。」
後ろに並ぶスゴウマな人に拓真が声を掛けた。
連れの人と話してた彼が、ゴーグルを外し顔を上げる。
ちょっと気の強そうな瞳が印象的で、どこか中性的な…キレイな人だ!
年は…俺と同じか、ちょっと上くらい?
「ありがとうございます。」
落ち着いたトーンでしゃべる彼を見つめて、拓真がニヤッと笑う。
「うちの連れが、人生初のボードだったんだけどね…。」
チラ、とこっちを見ながらそう言う。
「…惨敗です。」
彼はヘコむ俺に、ハハッと笑いながら…
「最初から上手い人なんていないでしょ。」
と、フォローを入れてくれた。
「そっちは?彼氏?」
「はい。」
―えっ!?
拓真の質問にびっくりして…普通に答えてる彼にも驚いた。
「…彼氏です。」
横にいた連れの人が彼の腰を引き寄せ、切れ長の鋭い瞳で拓真を見る。
…それを見た…拓真の眉がピクッと上がった。
…イヤな予感が…。
俺と…スゴウマな人をよそに、彼の彼?と拓真がガッツリ戦闘モードに入ったその時!
タイミング良くリフトが到着して、俺と拓真が先に乗り込んだ。
「…アイツ生意気だ。」
低く呟く拓真にギョッとして顔を見る。
…彼の彼、の強い瞳が拓真の神経を逆撫でしたらしく…かなり本気入ってるみたいだ。
「…拓真…落ち着いて!」
なだめても治まらない拓真に焦る。
なのにリフトは、非情にもアッサリと山頂に到着してしまう!
降りた俺達は、そのスゴウマカップルを待つかたちになり…段々と近付いて来る彼の彼は、一層挑戦的な瞳でジッと拓真を見てる。
「拓真…頼むからこんなトコで…」
「売られたケンカは買う。」
…最悪…。
目の前に降り立った彼の彼に向かって、拓真が開口一番に!
「テメェ、生意気だっつの!」
「お前こそ!俺の茱吏に色目使いやがって!」
…色…目?
「勝負だ!」
「俺に勝とうなんざ、百万年早いぜコゾーッ!」
…そのまま…
俺達を置いて、二人は上級者コースを物凄い勢いで滑り降りて行った。
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