THANKS
C
―昼過ぎ。
予定通り、俺達は白銀の世界のど真ん中にいた。
正確に言うと…
俺は初心者コースを、引けた腰で何とかバランス取りながら…ノロノロと滑り降りてる、と言う感じ。
その横を…拓真が流れるような動きで軽やかに滑走して行く。
舞い上げる雪をまとって滑る拓真は…この上なく、カッコいい。
俺の横にいる女の子達も、その姿にキャーキャー騒いでるし。
なんか…複雑。
ノロノロと更に降りてくと…その拓真がキレイなオネエサン達に囲まれてて…。
俺は…その横を、黙って滑り降りた。
「智!」
呼び止められても止まれずにいる俺を、拓真が後ろから抱き締めて…
「見てた?俺の滑り!」
熱い息でそう言う。
回りの目もあり…俺は少し戸惑いながら。
「…うん。見てたよ。」
「カッコ良かった!?」
「…カッコ…良かった。」
恥ずかしくて俯くと、アゴに触れた指に振り向かされ…キスされる。
回りにいたオネエサン達も、後ろにいた女の子達も…みんな静かに散って行った。
「智はイマイチ、苦手っぽいな。」
そんな俺の手を引き、ゆっくり滑りながら拓真が溜め息を付いた。
「…悪かったな。」
むくれる俺に苦笑いしながら拓真が「おぉ!」と声を出し、俺の後ろを指差す。
「見ろよ!」
伸ばした指の先では…ラフな段差を感じさせない程軽やかな動きで…キレイに滑る人がいた。
「上手いな…アイツ。…あのくらい上手けりゃ、智も楽しいだろうにな。」
…俺は…ただ黙って、その人の華麗でダイナミックな滑りに見入ってた。
「…せっかくだから、上に行ってみる?」
そう言われ頷くと、また手を引かれてリフト乗り場にたどり着く。
並んでる最中、拓真の手は俺が滑り落ちないように腰に回り…時々抱き寄せたり、イタズラしたりで…回りを気にする俺としては…かなり気が気じゃない。
そして気付くと。
俺達の後ろに、さっきのスゴウマな人と連れらしき人とが並んでた。
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