THANKS
A
結局…。
風呂場で最後までシた。
今日は…確かスノボをする予定だったっけ。
…やる前からすでにぐったりなんだけど…。
そう思いながらも…なぜか俺は、レストランの厨房でおにぎりを握ってる。
朝食を食べに来たのに、うちのわがまま王子様は出された物に全く手を付けず、ひたすらコーヒーだけを飲み続けてる。
根負けして渋々席を立ち、ウェイターさんにその旨お願いして…今そうしてると言う訳。
取りあえず、ちょっと大きめのおにぎりを四つ程作った。
「はい。」
ラップに包んだそれをテーブルに置き、玉子スープも渡す。
「おぉぉぉ!」
感嘆の声を上げる拓真の目がキラキラ輝いた。
おにぎりにかぶりつく拓真を見て、安心してご飯の続きを口にする。
「な、この具って何?スゴウマなんだけど!」
「アジの干物だよ。」
「えぇっ!?」
魚より肉派な拓真が美味いって言うんなら、相当なんだろな。
そう思ったらちょっと嬉しくなった。
「これからの予定は?」
無心に食べてる拓真にそう言うと、思い出したかのように時計を見上げて。
「ちょっとゆっくりしたら、レンタルしに行こうか。」
「うん。」
ご飯を食べ終わった俺は食器を重ねて手を合わせた。
拓真は丁度、玉子スープを飲み干した所で。
「智の作る飯はやっぱ美味いな。」
めずらしく笑顔でそう言った。
…この人は、俺が居なくなったら果たして生きて行けるんだろうか?
そんな疑問が浮かぶ。
…そんな事聞いたら多分怒ると思うけど。
「あのおにぎり、山頂で食べたらもっと美味いだろうな。」
窓の外の雪山を見上げて、こっちを向く。
「…あといくつ欲しいの?」
「四、五個?」
はぁ…と溜め息をついて立ち上がる。
…このわがまま王子様のお世話は…思ったより大変なんだ。
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