THANKS
D
「――いっ、でぇぇぇっ!!」
更衣室の横のシャワールームには俺の声が反響していた。
前では、シャワーノズルを片手に持った慶介が苦笑いを浮かべている。
そして俺はというと、そんな慶介に身体を支えられてやっと立っているという状態だった。
「……いっ、づ……」
「先輩、無茶しないでください」
「もとはと言えばっ、おまえが……っ!!」
腕を突っぱねて、文句の口を開くけれど。
力の入らない身体のバランスを崩しそうになった俺の身体は、慶介に間一髪で抱きとめられた。
「〜〜〜〜っ!!」
悔しいけれど、今は慶介を頼るしか道はないみたいだった。
「慶介がっ、いけないんだからなっ!!」
柔らかい女でもない俺の身体で、あんな無理な体勢のセックスするから……。
おかげで背中も腰も脚も……あそこも、痛いし。
……まあ、散々俺も感じてたけどさ……。
言葉の後が続かなくなった俺はせめて、と精一杯慶介を睨みつけるけれど。
「大丈夫ですよ、俺がおぶって教室まで送りますから」
と、慶介はにっこりと一点も悪気がない様子で微笑んだ。
「ばっ、バカ野郎っ!!そんな情けないまねできるかっ!!
それに……そんな状態で行ったら、ヤりましたってバラしてるようなものじゃんか……」
「俺的には公衆にバらしたいんですけどね」
「ん?何か言ったか?」
「いいえ、何も」
……よくわからん。
ボソッと言っときながら、白々しく笑うなっての。
それでも、慶介を憎めないのは忌々しいこの感情のせい。
「慶介のバカっ!!この、サカり犬っ!!」
俺は慶介に向って叫び散らかす。
けれど、慶介はそれに動じた様子もなく幸せそうな笑顔をうかべて俺にいっぱいのキスの雨を降らせるんだった。
結局その後、雨は止んだものの、教室へは戻ることができずに更衣室で時間をツブしたのは言うまでもなかった。
そしてその後、慶介の性欲が一回で治まったかどうかは、内緒。
-終-
2007/06/10*深雛
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