THANKS
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「……け、すけ……、ちょ、っと……待て……っ」
濡れて肌に貼りついた夏制服のシャツの上から乳首を口に含まれて、俺は甘い波に飲み込まれ始めていた。
「待てません。誘ったのは秋人先輩ですよ」
更衣室の着替え用の台に緩く腰をかけた膝の上に俺を載せながら言う慶介は、無邪気な子供みたいな瞳で俺を見上げていた。
余裕さえ見える慶介が憎らしくって、睨みつけようとするけれど。
「……先輩、可愛い……」
「ふぁ……っ、ん……んぅっ……」
冷えた身体に、声とともにかかる熱い吐息にさえ、俺の身体は快感に震えてしまっていた。
そもそも、こんな場所でこんなことになる原因となったのはさかのぼること少し前の話。
校内のプール裏で一人フケていた俺は、俺に付きまとっている男で、あろうことか俺自身が惚れてしまっている男、慶介に偶然(?)発見されてしまった。
グラウンドで体育の授業中だったと言う制服姿の慶介は、
「今日は朝から少し体調が悪くて、見学していたんです」
などと、にこやかな笑顔で白々しく(強調)言った。
絶対、嘘だろ……。
あまりに堂々と嘘をつく慶介に壁に寄りかかりながらワザと大きくため息をついた。
……照れ隠しだよ、悪いかっ。
どんな形でも、惚れたやつが目の前にいたら嬉しいだろ……普通。
でも、素直に喜ぶほど俺は素直じゃないし出来た人間でもないわけで。
けれど、慶介はそんな俺を気にした様子もなく屈託のなさそうな笑顔をすい、と俺の顔に寄せてきた。
いきなり慶介のアップに見つめられて心臓がうるさいほど音を立て始める。
「先輩こそ、こんなとこで寝てたらどこかの野獣に襲われちゃいますよ?」
「……っ、そんなすんのはおまえだけだって」
「先輩、自覚ないんですか?」
「自覚って。そ、それに……野獣はおまえだけで充分だ」
恥ずかしさのあまりだんだんと小さくなっていく声に慶介の顔が緩んだ、と思ったら。
「……じゃあ、今ここで先輩専用の野獣になってもいいですか?」
…………はあっ!?
慶介の言葉の意味を理解するのに、一瞬遅れた俺はその隙に慶介に抱きすくめられていた。
ぴったりとくっついた身体から、薄いシャツを通して慶介の高い体温をじかに俺に伝えてくる。
「……秋人先輩……」
熱っぽい声で耳元に囁かれる。
ムカつくけど、俺にとってはそれだけで腰砕けものだった。
少し離した身体、慶介は俺の顎と瞳を捉えて……。
俺たちは吸い寄せられるように、お互いの唇を寄せる。
「け……すけぇ……」
被さっていく瞼とともに、その唇が慶介のそれに触れようとした。
――その時だった。
頬に何かが零れ落ちる感覚。
「ん……っ?」
不思議に思った俺は閉じかけた瞼を上げて、頬に触れる。
けれど、自分の指先を確認するまでもなく――。
「う……っ」
ザーッという激しい音とともに俺は頭から水をかぶっていた。
否、バケツに入っていた水かと一瞬思ったそれを、突然の大雨なのだと理解する頃には俺は慶介に手を引かれて走り出していた。
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