商い物 1 桜咲く新学期。 俺たちが通う高校では… 「弱ぇ…弱ぇんだよぉ!!」 ガキィィィイッ!! 青春真っ只中、喧嘩祭り中です。 「あっはは!よっわ〜。」 バキィィィイッ!! 私立五三(イツミ)学園。 通称ゴミ箱。 家族から見捨てられたような、諦められたどうしようもない連中の通う中高一貫校。 喫煙所の指定なんかあってないようなものだし、喧嘩は日常茶飯事。 授業はあるけど、カタチだけ。 教師含め弱肉強食の世界な俺たちにとっては最高の学園だ。 そんな中、1年の教室に入学式から3週間遅れで、異質なやつがやって来た。 「家庭の事情で、今日からの登校になった小田峰悠太だ。」 「………。」 「小田峰は一番前の右端な。」 「………。」 …いや、喋れよ!? 思わずつっこんでしまったが、小田峰はコクリと頷くばかりで喋ろうとしなかった。 見た目は地味。 不良には見えない。 そんでもって、無表情…。 あ、でもチラッと見えたけど怪我してる様子だった。 意外と強かったりして。 小田峰が席に着くと、担任の速水が出席を取り始める。 喧嘩も煙草も酒も黙認されているが、唯一この学園では朝の出席10回休んだら留年って決まりがあるから、留年したくない奴らは全員いる。 「東野〜」 「はーい」 あぁ、そう言えば俺は東野龍。 朝の爽やかな喧嘩後で、ややご機嫌。 てか、上級生弱すぎ。 1年のチームの中じゃ、俺んとこがトップだから、最近は上の学年と喧嘩して下剋上を目論んでる。 このままいけば、夏休み前までには下剋上できそうなんだよね。 「おーい、小田峰寝るなー」 「………すやぁ」 嘘だろ。 席着いて、そんな経ってないだろ!? またもつっこんでしまった。 それにしても変なやつだ。 小田峰は、速水に出席簿の角で殴られていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |