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SPECIAL!シリーズ
第5幕 初任務
佐樹は緊張した表情でメインルームにいる。
それは、これから初任務に行く為である。

「佐樹、緊張してるのか?」
「してるに決まってるじゃないっ!初めての実戦なのよ!?事件解決しにいくんだよ!?」
「別にお前一人で犯人捕まえにいくわけじゃないだろ。」
「そうよっ私たちがなんとかするから佐樹ちゃんは見てるだけでいいのよ〜」

怜と風花が佐樹を気遣うように言葉を交わしてくる。

(それは私はいなくてもいいってこと?だよねぇ・・・)

佐樹以外は高レベルの能力者のチームである。

(私なんて保護される為だけに居るようなものよね。)

勇火による事件についての説明、作戦が伝えられる。

今回の事件・・・・・・・・
都内の宝石店が被害にあっている。
犯人の姿は確認出来ず、あっという間に宝石類が消えていってしまうらしい。
そして最後に次回予告状が現れるようだ。

「瞬間移動能力ですか。」
「多分店の内部が見えるところ、しかも店の外に居ながらの犯行だと思うよ。」

(派手な騒ぎというよりも地味にコッソリね。)

「それって犯行が地味すぎて捕まえられないってことよねぇ?」

佐樹が思ったようなことを風花が口にする。

作戦によると、勇火と佐樹は店の近くを、風花と怜は少し離れた店が目に入るほどの辺りで犯人を捜す。
怪しい人物が居たら尋問。
場合によっては逮捕。

(こう言われるとすごく単純よね。)

そんなわけで、佐樹は勇火と宝石店が見える辺りにいる。

佐樹は真剣に辺りを見渡す勇火の横顔を見る。

(クォーターだよね、隊長って。)

金色の髪に端整な顔立ち。
やや高めの鼻。

(イケメンで性格も良くて何でも出来て、お金持ち。そんな人本当にいるのね。)

世の中不平等だと思ってしまう。

「佐樹ちゃん」
「はっはひぃぃぃぃぃっ」

(観察してたのバレた!?)

突然呼ばれて声が裏返ってしまう。

「怜のこと苦手?」
「え?えー・・とぉ・・・ちょっと・・」

勇火がそう聞くのもうなづける。

[J]に来てからの数日間、佐樹はチーム外の者とも問題なく接していける。
しかし、怜と行動を共にしているとき、なんとも言えない[間]を感じるときがある。

「まあ・・・怜は確かにとっつきにくいところあるし、トラブルも多いから難しいかもしれないけど、、いい子だよ。」
「わ、わかってる・・・つもり。悪い人じゃないって事はわかってるよ。一応。」

佐樹は勇火の視線から逃げるように、
熱心に怪しそうな人物を探し始める。

(苦手とか気があわないとかそういう人いない方がすごいのよっっ!)


怪しそうな人物はまだ見つからない。

別の位置から探している怜や風花からも連絡がないことを考えると、犯人はそうとううまく隠れているようだ。

「どうやら始まったみたいだね。」

勇火の声で、店の方を見る。
店内からは店員が赤いライトをチカチカと光らせているのが目に見えた。

双眼鏡で確認すると、宝石が次々と消えていくのが見える。

「早く見つけようっ」

(怪しい人物、怪しい人物っっと・・・?)

この辺は浮浪者が意外と多い。
いや、この塔叶に来て、佐樹は浮浪者を初めて見て驚いたことが記憶にある。

だから、日常で見ても怪しむことはないのだが・・・・・

「隊長、あれどう思う?」
「あれって・・・あの人?」

2人の目線の先には一人の浮浪者の背中。

(目立つってわけじゃないけどさぁ、さっきからガサガサジャラジャラ気になるのよねぇ・・・)

「金属音か、確かに。」

勇火は男に近づくと、肩を軽く叩く。
男はビクリと体を震わせ、ゆっくりと振り返る。
だいたい40代くらいだろうか。

「すみません、こういう者ですがちょっとよろしいですか?」

そういいながら[J]の身分証明書である手帳を見せる。

(おぉっ!刑事ドラマみたい!あ、あれっ私もやっていいんだよね!?)

佐樹もすかさず勇火の真似をして手帳を誇らしげに掲げてみる。

「ひぃっっ!!」

男は過剰に反応し、荷物をぶつけて逃げ出す。

「逃げたって事は決まりだね!!」
「まちなさいっっ!」

男は近くにある自転車に飛び乗りダッシュでこいでいく。

(用意していたなんて侮れないわね!)

「足止めしよう!」

勇火は胸の前に両手を合わせると、ゆっくり離していく。

手の間には炎の塊が生まれていく。

(火・・・・・みんな燃えて・・・)

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!」

佐樹は震えが止まらなくなりその場に崩れる。

「佐樹ちゃん!?」

勇火は慌てて炎を消す。

「落ち着くんだ!君の家族は誰も亡くなってない!!」
「わ、わたしだけ、わたしだけ助かっ「違う!みんな無事なんだ!今は信じて探してるんだ!!」
「探して・・・?」
「そう!信じるんだ!!」

佐樹の表情に落ち着きが表れてくる。

勇火はそんな佐樹の頭を優しくなでる。

そして携帯を取り出す。

「怜、すまないけど僕たちは動けない。犯人の男は浮浪者風の40代くらいで、自転車で逃亡中だ。目星ついてる?後は頼んだよ。」

(私なにやってるんだろう。肝心なときに足引っ張るなんて・・・)

「・・・・・ごめんなさい・・・」
「君があやまることじゃない。あんな事件があったばかりなのに僕の配慮が足りなかったせいだ。すまない。」

「違う・・・私がっ・・・・・」

(あれ、なんで涙なんか・・・・・)

「火が怖いんだね。これからは配慮するよ。今回のことなら大丈夫。怜と風花があとは全て済ませてくれる。2人共なら失敗しないさ。」


そのころ、犯人は追いかけて来る者がいないことに気付き、今回も上手くまけたと笑みを浮かべていた。

自転車の速度を落としていく。

が、空から[J]の制服を着た男女が降りてきて50メートル先に立つ。

少年が水で生成した銃を男に向ける。

「止まれ。」
「だっ誰が!!」

男は2人を轢こうとするかのように勢いよく向かっていく。

「舐められたな。風花」
「はーいっ切り裂きまーすっっ」
「へっ?」

風が勢いよくふいたかとかと思うと男はハンドルを持ったまま地面に倒れていた。

自転車がハンドルごと切られたと男が気づいたときは能力を無力化する手錠を付けられたあとだった。

「ふ、普通銃を撃つんじゃないのか?」
「俺は脅し」
「この方が意外で面白いでしょ?」

こんなわけのわからない奴らに捕まるのかと男はガックリと頭をうなだれる。

「そうだ!隊長!!」

怜は叫ぶと駆け出す。

「怜っっ!!」

風花を置いて勇火たちがいると思われる場所に向かっていく。

「隊長!ご無事ですかっっ!!」

宝石店の近くで勇火を発見し、安堵の表情になる。

そして駆け寄り・・・

「お前!!なに隊長の足引っ張ってんだ!!」
「いっっ!!」

佐樹の両頬を思い切り引っ張る。

「こらっ怜っっ!やめるんだっ!」
「しょーよっあはひのへいよ(そうよ!私のせいよ)!」

佐樹は怜の両手を叩き落す。

「仕方ないじゃない!火が怖くなってるなんて知らなかったんだから!!」
「開き直りかよ!」
「うっさい!こんどから気をつけるんだから!足引っ張んないくらいには強くなるわよ!!」
「はっどうだか」
「なんですって!!」

佐樹は怜の両頬を引っ張る。

「いひゃひへど(痛いけど)!?」

怜も再び頬を引っ張る。
お互い睨み合う。

そこに風の能力で男を運んできた風花が現れ
「何やってるんですか?あの2人。」
「えっと・・・彼らなりのコミュニケーションかな?」
「ふーん・・・じゃあ2人共もう仲良しね!」
「「誰が仲良しだーーーーーっっ!!」」

佐樹と怜のハモりが綺麗に響きわたったのである。


NEXT STEGE・・・・・。


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