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君の弱みにつけ込みます(マツバ)


「やぁ、なまえさん。体調はどうだい?」


「ママママ、ママママ!」


「何、GAGAかな?」


「レディガガ違う!」



扉を開けるとイケメンが立っていました。



隣のマツバさんは修験者というものらしく、私に分かりやすくいうと霊能者みたいな感じ。
初めて挨拶した時は綺麗な人だなーとか、垂れ目可愛いなー垂れ目メイクにしようかなーとか考えがら、マツバさんと当たり障りのない会話をしていた。


『あ、ずーっと気になってたんだけど』


『はい?』


『なまえさんは結構好かれる体質なんだね』


気をつけてね、と後ろにある誰もいない私の家を指差してマツバさんは静かに微笑んだ。
意味が分からず、最初は誉められたんだと勘違いして『そんなことないですよ!でもありがとうございます』とはにかんだらマツバさんは数回瞬きをしてから益々笑みを深めて『どういたしまして』と呟いた。


後で薬屋のおばあさんからマツバさんの話を聞いて私は絶叫した。



「何で体調悪いって分かるんですか…っ」


「そりゃあ…」


と言いながら視線を何もない奥の部屋に移すマツバさんに私は「やめてー!意味深に言葉を切った後何もないはずの部屋の中を何かを目でおうように見るのはやめてー!」としゃがんだ。
マツバさんは困ったように「賑やかだね」と小さく笑った。


「僕はね、これでもちょっと力はあるんだよ」


垂れた目を益々垂れ下げてマツバさんは笑みを深めた。
マツバさんの(霊的な)力がちょっとやそっとどころではないのは薬屋のおばあさんからきいている。


「祓ってくれるんですか!?」


むしろこれだけ煽っておいて何もしてくれないと言うのは酷い。
ジムリーダーにあるまじき非道。むしろ人間として非道である!


「祓えるけど、なまえさんの体質はなかなか変えられないからね…」


(私にとって)穏やかではない話題なのにマツバさんはまるで、ほろ酔い気分〜♪のように機嫌が良さそうだ。
この人、絶対酷いっ。


会話をしながらも時々マツバさんの視線がチラチラ移るのが怖くてたまらず失礼ながらもマツバさんのニットの袖を摘ませていただいた。


「でもいい方法があるんだ」


「え!何ですか!?」


神様仏様マツバ様!
私は期待に胸を膨らませてマツバさんを見た。

「こうしてると彼らも寄り付かないよ」


袖を摘まんでいた指をそっとはがしてマツバさんの手が私の手を握った。
驚きはしたけど不思議と嫌悪感はなく、ニコニコと微笑むマツバさんに私はこの行為の意味を悟った。


「……まさか、ずっとですか?」


「それが一番いいけど、無理だろう?定期的にこうやれば大丈夫だよ」


口移しとか……の方が効果はあるし長持ちするけど、それは追々ね、とよくわからないことをマツバさんは一人で呟いていたけど、恋人でもないマツバさんと定期的に手を繋いで力を分けてもらうのは気が引けるなぁと考えていた私には内容までは理解できなかった。




君の弱みにつけ込みます
(君も幸せ、僕も幸せで良いことじゃないか)







そしてそのままマツバさんのアタックでなし崩しで付き合っちゃう的な。
多分マツバさんの一目惚れ。



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