ちぐはぐ三人組(零&涯)
私と宇海零くんと工藤涯くんはいとこ同士。
厳密には私のお母さんの妹の息子さんが零くんで、零くんのお父さんの兄の息子さんが涯くん。
つまり私は零くんといとこで、涯くんとはいとこではない。
そして私と零くんは幼なじみじゃないけど零くんと涯くんは幼なじみで、血の繋がりとか関係性は涯くんより零くんの方が強いんだけど、私はもっぱら涯くん贔屓だったりする。
零くんと私は何かにつけて涯くん涯くんとついて回る。涯くんからしたら私も零くんも世話の焼ける妹弟みたいな感じだ。
そしてもう一人、標くんがいる。
標くんは零くんの親友であり好敵手である。
零くんは昔から超絶に頭が良かった。
だから高校も余裕で首席かと思いきや、標くんが首席を取ったのだ。
それからの二人の静かな熱い闘いは素晴らしかった。
零くんは悔しいなぁと言いながらいつも楽しくてたまらないといった風に標くんと競っていた。
涯くん曰わく『同じ土俵で競える奴がいて楽しいんだろう』らしい。
私は知らないけど中学生時代の零くんと涯くんは『病み期』だったらしい(互いに互いをそう評価していたから面白かった)
偏差値がべらぼうに高い特進クラスもあれば、私や伊藤先輩、平山先輩みたいな平々凡々でもついていけるクラスもある、なんともバラエティー豊かな学校だ。
勿論通う人間も個性的だったりするから、疲れるやら楽しいやら。
「なまえ、今日一緒に帰れないから」
「え!?伊藤先輩から巻き上げたお小遣いでクレープ奢るって言ったじゃないか零くんの嘘吐き!」
空の弁当箱を振り回してバシバシと零くんに当てると行儀が悪いと涯くんに怒られてしまった。
「巻き上げたって人聞きが悪いよなまえ…。先に賭けてきたのはカイジ先輩だぜ?」
「それに標も加えてわざわざ二人掛かりでたたみかけといて悪くないと言えるのがすごいな宇海」
涯くんがあまり表情筋を使わずに淡々と言うと零くんは悪い感じで「そうだっけ?」と笑った。
「標くんがそんなの協力するなんて意外…」
「そんなのって酷いなぁ。標も俺もカイジさんには一目置いてるからね。時々すごいんだよあの人」
常日頃(主に一条先輩や和也先輩に)虐げられている伊藤先輩ばかり見ているのでいまいちぴんと来ないけど、稀に伊藤先輩はやる男らしい。いつもは明らかにダメンズだけど!
「ふぅん…。この前廊下で一条先輩に頭を踏みつけられて泣いてた伊藤先輩が、ねぇ…」
「オイ、なんだそのシュールな光景は。一歩間違えたらトラウマだぞ」
「あれ、涯くんがそれを言う?」
あまり詳しくは掘り下げないけど、涯くんは結構苦労したらしいから頭を踏みつけられるくらい屁でもないイメージ。
「普通は結構キツい光景だと思うぞ。あまり見て慣れないようにしろよ」
そう言って涯くんは私の頭をポンポンと叩いた。
「もう私涯くんと結婚する!嫁になって癒やして!」
「あ!ずるいぞなまえ!涯くん、俺の方が絶対稼げるからな!」
「何を競ってるんだお前ら!」
ちぐはぐ三人組
私たちはこれぐらいが丁度いい!
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