進化と可能性と変化について(ネウロ)
※探偵事務所成人雑用ヒロイン
※ネウロの正体は知ってる
『昨夜遺体で見つかった女性は三年前に行方不明になった…』
「「………」」
桂木先生と二人でテレビを見つめる。怖いですね、などと話しながら先生とあかねさんとネウロさんにお茶を注ぐ。
最近何かと物騒な事件が多く、昼のワイドショーもネタに困らないらしい。先生はソファーに思い切り体を沈めてため息を吐いた。
「何だかなぁ…」
「先生?」
少し拗ねたような先生の表情に、私が声を掛けると先生は再びじっとテレビを見つめた。
「サイとかいなくても世の中悪質な犯罪だらけだなぁと思って。いや、サイも強烈だけどね。何だろう、やるせない…」
先生の言葉に私は苦笑した。確かにこんなニュースばかり見ているとそう思ってしまうのは仕方ない。先生は特に真っ直ぐで純粋だから尚更そう思ってしまうのだろう。
「ですが先生、こんな人間ばかりじゃないですよ。仕事柄ちょっと普通よりそう言った側面が見えるだけで、やるせない事件があるより多く人の日常は普通に過ぎているはずです」
私は先生の座るソファーの後ろに立って一緒にテレビのニュースを見る。
「謎の種になる狂気はその日常に潜んでいるのだ。ヤコよ、貴様もいつその『やるせない事件』の主役になるか分からんぞ?」
新聞から目を離さないままネウロさんが先生に言葉を投げる。
「私は、ならないよ!」
「あ、お気をつけて先生」
「ありがとう!お茶美味しかったですっ」
先生は私ににっこり笑顔を向けた後ネウロさんにデリカシーがない魔人め!と言いながら先生は鞄を持って事務所から出て行ってしまった。
「素直じゃないんですね、ネウロさん」
「ふん、戯け。我が輩は真実を口にしただけだ。人間とは皆、内なる狂気を持っている。持っていない人間も、ずっと先持たない確信などないのだ。だからこそ人間は興味深い」
「そうですね。隠してる人、気づいてない人、今はまだ持ってない人、今までもこれから先も持たない人、それぞれですね」
ふと視線を向けるとネウロさんが新聞を燃やして窓の外を見ていた。恐らく視線の先は桂木先生だろう。
「あやつも貴様も、どれになるのだろうな」
そうしてネウロさんは至極退屈だと呟いた。
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