明日もし晴れたら(忍足)
「あー・・・雨雨雨」
梅雨か!と突っ込みたくなる雨続き。
もう四日間は降りっ放しだったりする。
雨は嫌いじゃない。むしろ大好きだ。
でも降るタイミングを間違えた長雨は、私の嫌悪対象。
私は今、彼氏の部屋に来ていた。
「なんやさっきから機嫌悪いなぁ・・・。機嫌直しぃ、な?なまえ、折角部屋に来とるんやし・・・」
まるで子どもをなだめるように私の頭をよしよしと撫でる侑士。
「だって・・・」
関東大会で不動峰に負けて事実上引退と言う形をとった侑士たち。
だから日曜に遠出しようって計画した途端に長雨。
「なまえはいつも『雨好き〜』って言うてたやん?自分が生まれた日も大雨やったからって……耳つんぼになるくらい聞かされたで」
ぴちょん、ぴちょんと窓枠に水がたまる。
「タイミングが悪い。何もさぁ……久し振りのデートに降らなくても良いのに」
私の頭に置かれていた手が私の腰を掴んだ。
「うひゃっ!?」
「かわええ…」
抱き込まれる形で侑士の体に引き寄せられた。
「俺はなまえとこうしておるだけで良いわ」
長い侑士の髪が頬に、首にかかってくすぐったい。
「ラブロマの影響?」
絶対今顔が赤くなってる。
侑士に背を向けた状態で助かったかも。
「ちゃうって、大体なぁなまえ。なまえがこうやって大好きな雨に怒っとるん、嬉しいんやで?」
「え?なんで?」
顔だけを侑士に向ける。
侑士はニコニコしてた。
本当に機嫌が良いらしい。
「大好きな雨よりも俺が好きってことやろ?」
また頭を撫でる。
「え、そんなの………普通当たり前でしょ?」
「……………………だから俺はなまえが好きやねん」
今度は向かい合わせに抱き締められた。
「よくわかんない……」
おっきな侑士の体が自分に寄り掛かる。
なんだか愛しいと思ってしまった。
「………明日晴れたらどっか行こか」
「部活は?」
「出るよ。二年生にまだ引き継ぎせなあかんし。部活は出るけど授業はサボる。んでなまえを連れてく」
「本気?」
「本気も本気、大マジや。せやからなまえ、大人しゅう俺にさらわれとき」
いつの間にか雨は小降りに。
明日の天気予報は見てない。
明日もし晴れたらどこに行こうか?
まだ未定。
明日もし晴れたら
(俺が一番欲しい言葉くれるんはなまえだけや)
(……?侑士超ご機嫌?)
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