ハンカチ王子(不二)
わたしってば結構女を捨ててると思うよ。
隣の女の子は鏡を一生懸命見つめてどこが乱れているのか分からない艶やかな前髪を直してる。前の席の女の子はリップを出して弾力のある唇に艶を出すことに一生懸命だ。みんな自分の見た目を気にしてる。わたしはそんなに自分の見た目が気にならない。
「このハンカチ、新しく買ったんだ!石けんのかけらを挟んで匂いを移したの。これでさり気なくアピール!」
「すごいねぇ…」
ってことはそのハンカチを貸してなんて言えない。ハンカチを取り出すふりをしてスカートで手を拭おうと決めた。
「みょうじさん、ストップ」
「えっ?」
後ろから濡れた手首を誰かに握られて振り返ると笑みを浮かべた不二くんが立っていた。わたしは思わず自分の手首と不二くんの顔を交互に見る。何ですかこの状況。
「はい、ハンカチ。また今度返しに来てね」
「え、あ、ありがと…」
濡れた手を包んだ青いハンカチ。フワリとかおる洗剤の匂い。不二くんはわたしにハンカチを掴ませるとそのまま菊丸くんのところに行ってしまった。情けない、普通男の子からハンカチを受け取るか女子。でもまぁ、いい匂いがするし有り難く使わせていただきます。
そして今日から不二くんのことをハンカチ王子と(心の中で)呼ぼう。
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