トライアングルバランス_4
「大山さんのこと、採用することにしたよ。」
部屋から出てくるなり店長があたしに話しかけてきた。
それの後ろについてきた大山さんはぺこりとお辞儀をして微笑んだ。
「必要な書類も全部書いたことだし、ちょっとだけ仕事覚えて帰る?」
「はいっ。」
店長はせっかく同じ大学だし仲を深めるために、と大山さんの担当をあたしにした。
「あたしのことは瑛怜菜でいいからね。」
大山さんはずっとニコニコ笑っている。
学校で何度か見かけたことがあったけど、いつも笑っていてそれ以外の表情を見たことがない。
だから怒ってる顔とか正直想像できない。「あ、うん。よろしく、瑛玲菜。」
さっそく名前で呼んでみると瑛玲菜はとても嬉しそうに笑った。
この子の笑顔はきっと人の気持ちを癒やすことができるんだろう。みる度に自分の気持ちがどんどん和んでいく気がした。
「じゃあまず簡単な仕事から説明するね。」
「はいっ。よろしくお願いします、センパイ!」
瑛玲菜はあたしの後をちょこちょことついてきて説明してる間は真剣な顔で話を聞いていた。
やる気は十分あるし、物覚えもいいからきっとすぐにここに慣れるだろう。
初日ということもあって瑛玲菜は一時間ほど仕事をしてから、
「よし、今日はこの辺であがっていいよ。」と店長に言われた。
「ありがとう。これからよろしくね。」
「はいっ。」
とびきりの笑顔を店長に向けて瑛玲菜は帰っていった。
あたしも今日はあと1時間。頑張ろ。
「りょーう。」
あと数十分であがるという時間に尚が来た。
浅間尚行は現在福祉の専門学校生。
あたしの彼氏。
「あと少しであがりだろ?一緒に帰ろう。」
「うん!」
尚は新曲のCDを見ながら待っていてくれた。
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