EVERY DAY 10 「タラシって………。 俺、みずほにタラシって思われてるんだ………。」 そう呟ぐ雅哉は見るからに落ち込んでいた。 「んー。正確には違うんだけど、女好きだーって聞いたよ。」 「好きだよ!」 「タラシじゃん!!」 「うーん……そうなのかな…。」 そう言って雅哉は口を尖らせて止まっていた手を動かし、ニンジンをトントンと切っていく。 恵里は少しの間雅哉の動きを見つめていたが、気になっていたことを雅哉に聞き始めた。 「ね、みずほは何もないって言ってたけど、雅哉君はみずほのこと好きなんだよね?」 「へ?な、にが?」 雅哉は平静を装おうとしたが、声が上擦ってしまう。 「ふふー。やっぱりそーなんだ? 自分のことみずほがどう思ってるか気になるぐらいだもんね。」 「なに、俺、そんなにわかりやすいの?」 「や、そういうわけじゃないけど、ただなんとなく? そうだったら面白いなーって。」 と言って恵里は無邪気に笑った。 「面白いって…………俺はっ、「さっちゃん来れるみたいだよ!」」 雅哉の言葉は台所に戻ってきたみずほの嬉しそうな声によってかき消されてしまった。 「なんか今日ママと買い物行ってたみたいで、ちょっと遅くなるかもしれないって。 話、割り込んじゃってごめんね。 どーぞ続けて。何の話してたの?」 「いや、別に、いいんだよ。」 話を戻すわけにはいかない雅哉は不自然なほど明るい笑顔でみずほにそう答えた。 「え?何で?」 と、今度はみずほが口を尖らすのだった。 [*前へ][次へ#] |