13.真実への鍵 ****
「もう止めろ、XANXUS!」
ラル・ミルチさんの静止も聞かずに、XANXUSは言葉を重ねる。
憎悪のこもった嘲笑(ちょうしょう)で、更に沢田さんを追い詰める。
「『奪う力』は危険分子だ。最強を誇るボンゴレの、妨げにしかならねー。
だから──“排除“されて来た。歴代の──、ボスの手によってな…」
沢田さんの肩が僅かに揺れた。
「その女を排除するのが、テメーの役目だ──、沢田綱吉」
これ以上聞いていられなかった、この男の戯言を。
これ以上見ていられなかった、傷付いた、沢田さんの姿を──。
「希望の光とほざいた奴を、テメーは自らの手で排除するしかねーんだよっ、ドカスが!!」
気付いた時には、歩き出していた。
慣れないヒールのせいで、何度か足がもつれそうになったが、それでも歩みを止めない。
カツカツと静まり返った場内に、私の靴音だけが響き渡って。
ピタリと音が止んだのは、会場内の中央部。
XANXUSの──目の前。
傍らに立った私の姿を、鋭い眼孔が射抜いた、次の瞬間、
──パァァァンッ
乾いた音がこだまする。
その場にいた誰もが言葉を失っているようだった。
私の右手に残るのは、人を叩いてしまった後の、嫌な感触。
けれど、後悔はしていない。
ジンジンと痛むその手を握り締め、私は叫んだ。
「見損なわないで」
これまでの出来事が、走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
今まで沢田さん達から受けた、優しさや暖かさ。
それは私の、その向こう側にいた、別の誰か(歌姫)に向けられていたものかも知れない。
けれど、彼らに出会えて本当に良かったと思っている。
怖い思いも沢山したけれど、平凡だった私の人生を、彩りのあるものに変えてくれた。
『特別』だと思える存在にさせてくれた。
私は、背後で固まったままの守護者達を振り返り、笑顔を向ける。
(皆さんのおかげで、ほんの僅かの間でしたけど、お姫様になれた気がします)
幼い頃に誰もが抱く、儚い夢。
忘れていた、あの夢を、
叶わないと諦めた、その願いを──、
ほんの一時、ここにいる皆が叶えてくれた。
ボンゴレが心から望む『お姫様』に、私はなってあげる事が出来なかったけれど、
せめて最後くらい、お世話になった皆の為に、私の出来る事をしたい。
「沢田さんに、そんな事させません」
優しい沢田さんの負担にならないように。
これからのボンゴレの妨げにならないように──。
私が取るべき行動は、ただ一つ。
「私は自らの意志で、ここ(ボンゴレ)を出て行きます」
真実への鍵
(ありがとう、ボンゴレファミリー)
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