76.それぞれの戦い **
雷の炎を纏った死カマキリ。私は逃げる事も出来ずに迫り来る炎を見つめる事しか出来なくて…。
(直撃するっっ)
そう思い、顔を両腕で隠そうとした刹那。私の真横を紫の炎が通り過ぎて行った。見るとそれは雲雀さんの雲ハリネズミ。
雲ハリネズミはそのまま死カマキリに向かって行き――ドーンッ!!けたたましい音を響かせながら二色の炎が衝突する。
しかしそれはほんの一瞬。次の瞬間には雲ハリネズミが死カマキリを押し返し、同時に匣の主までもを弾き飛ばしたのだ。
「そんなに死にたいの」
ユラリ。私の前に見慣れた背中が立ち塞がる。
「言った筈だよ。僕を無視して名前に手を出せば問答無用で咬み殺すと」
肌を突き刺す程の異常なまでの殺気。決して私に向けられているモノではないと分かっているのに、恐怖で身体が竦んだ。
「…そんなに彼女が欲しいなら、僕を倒して力ずくで奪い取るんだね」
後ろに居る私でさえこうなのだから、前方から雲雀さんに睨まれている隊員達はどんな気持ちなのだろう。案の定、敵の何名かは恐れ戦(おのの)き、そのまま数歩後ずさっている。当然の反応だ。
『名前、聞こえるか』
息を飲むような張り詰めた空気の中、耳に装着した通信機から子供特有の高い声が聞こえて来た。
私は慌てて通信機に手を添え、聞き取りやすいよう、耳を澄ます。
「はい、聞こえます!リボーンさん!!」
『そっちの戦況はどうなってんだ?』
「想像以上の兵の数が此処に集結しています。これなら突入した沢田さん達も動き易いのではないでしょうか。――あの、それで沢田さん達は?」
『アイツらなら大丈夫だ。無事メローネ基地内に潜入した。…だが』
「だ、が?」
彼の「大丈夫」の発言にホッと胸を撫で下ろしたのも束の間。言葉を詰まらせるリボーンさんに一抹の不安を感じた。
「リボーンさん?何かあったのですか?」
『…警戒レーザーキャノンが発射されたらしい』
警戒レーザーキャノン!
「それで皆さんは!?」
『通信が途切れがちで安否の確認が取れねぇ』
「そ、んな…っ」
「心配すんな。さっきも言っただろ?アイツらなら大丈夫だ。どんな状況にも対応できるように鍛えてある。……それに、お前なら分かるんじゃねぇか?守護者と最も深い繋がりを持つ歌姫なら」
“アイツらが無事だと”
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