ミルフィオーレが奇襲をかけて来る事は前もって雲雀さんから聞いていた。クロームさんの荷物に発信器が仕掛けられていて、それを頼りに此処に攻め込んで来るだろう、と…。でもこれは想像していた以上の数だ。
私は四方を取り囲む無数の敵へと視線を巡らせる。数十…いや、それ以上は居るだろうか。この人数を一人で相手にしようとしていたのだから、雲雀恭弥。最強の守護者の称号は伊達ではない。
「ボンゴレめ!!」
「…ボンゴレ?違うよ」
「くそっ、まんまと罠に填めたつもりだろうが、そうはいかんぞ!」
何て感心している場合ではなかった。私は今、敵の群のど真ん中にいるのだ。案の定、敵の一人が私を振り返る。その手には炎を灯したリングと匣兵器。どうやら先ずは私を標的にするみたい。
「歌姫を生け捕りにし、こんな場所、直ぐに突破してやる!!」
その台詞を合図に周りに居た隊員達も一斉に匣を取り出した。彼方此方に色とりどりの炎が灯る。
「…君達と遊んでいる暇はないんだ。――名前、準備は良いかい?」
「はい!!」
私は胸の前で両手を組み、静かに瞳を閉じた。
危険を承知で敵の中枢に身を置いた理由。それは歌姫の力を使って出来る限りの敵を一掃する為。
まだ上手く力を使えるか分からないけど、自分に出来る事をやると決めたのだから、やるしかない。私は組んだ両手に力を込める。コントロールを間違えないよう、心を落ち着かせ、そして――。
(“眠りの歌”発動)
私は旋律を奏でた。
◇ ◇ ◇
ヴー…ヴー…。
早朝。アジト内に警報音が響き渡る。綱吉達は言われるままに出撃の準備を済ませ、アジトの廊下を走り抜けていた。
「一体何なんだ!!」
「この警報音、ただ事じゃないぜっ」
「それにいきなり出撃って予定より早くない!?」
『敵の攻撃だぞ』
通信機から聞こえて来たのは、リボーンとジャンニーニの声だ。
『2q離れた倉庫予定地にミルフィオーレの大部隊が集結している模様です!相当な数です!』
『既に雲雀と名前が向かっているぞ』
全「!!」
綱吉達は自身の耳を疑い、それと同時に言葉を失った。雲雀だけではなく、名前までもがその場に向かっただ何て…!
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