「流石アルコバレーノ。その通りですよ」
全身の力が…抜けた。
(そ、んな…)
涙で視界がぼやける。立って居る事もなままらず、その場に座り込みそうになった私を、骸さんが咄嗟に支えようとした――その瞬間だった。
「………ねえ…」
地を這うような低いテノールが辺りに響き渡る。同時に凄まじい殺気が身体中に纏わり付いて、私はビクと肩を震わせた。
声の主はボンゴレ最強の守護者、雲雀恭弥さん。私の知っている雲雀さんとは別人のようだ。
「…その汚い手で、何時まで名前に触れているつもり?…目障りだ」
「クフフ、目障り…ですか。奇遇ですね、僕もそう思っていたんです」
三叉槍を私から雲雀さんに向け変える骸さん。雲雀さんもトンファーを構えて戦闘の体制に入る。
「お二人共っ、止めて下さいっ!!」
「「………」」
「雲雀さん!骸さん!」
「…貴女は邪魔です」
雲雀さんが向かって来るのと同時に、骸さんが私を突き飛ばす。
「……っ…」
「「名前!」」
床に投げ出された私に獄寺さんと山本さんが駆け寄ろうとした。けれどそれを阻んだのはファルファッラさんだ。
「折角手に入れた歌姫ですもの。そう簡単に返す訳にはいかないわ」
「てめー一人で俺達に勝てると思ってんのか?」
「ええ、勿論」
「骸は雲雀と戦ってる。助けには来ないぜ」
「そうね、彼は無理だわ。……だけど…」
ファルファッラさんは無理矢理私を立たせて、背後に回る。
「この人が私の盾になって下さいますから…」
カチャリ。私の顳みに拳銃が突き付けられた。
「くそっ」
「てめーっっっ」
「これで私には指一本触れられないでしょう」
悔しそうに顔を歪める獄寺さん達に、ふふと妖しい微笑みを浮かべるファルファッラさん。
彼らの背後では、雲雀さんと骸さんが戦っている姿が見えた。二人共傷だらけなのに、それでもまだ戦っている。恐らくどちらかが倒れるまで、戦いは続くのだろう。
「……め…て…」
これ以上見たくない。大切な人達が争ったり、傷付いたりする姿は……。
(どうしたら止められる?彼らに助けられてばかりの私に何が出来る?)
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