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NGの反対[NGライフ]
NGライフ、裕真夢。





夢を、見たんだ。




セレナの生まれ変わりのその人はセレナそっくりな容姿をしていて


そして、セレナと同じ声で言うんだ。


今を生きてほしい、とセレナもそれを願ってるはず──と。




思わず叫んでいた。


『お前はセレナじゃないだろうっ!?』


そんな事を言うつもりなんてなかった。


口から出た言葉に自分自身が一番驚いた。


だって、目の前にいるのはセレナの生まれ変わりなのに……。




いつからか、目の前にいる人とセレナを重ねて見なくなってしまったのか。


今の自分はシリクスで、それは変わらないはずなのに。


シリクスであるはずの俺は段々と違う“自分”になっていく。


ずっとシリクスでいたいと願っていたのに……。




『私の妹を忘れていまいな!?』


うん、忘れてないよ……スミルナさん。



でも、いつか消えそうで怖いんだ。


前世の記憶が、セレナが…シリクスである“俺”が……。




ただ伝えたかったのは「愛してる」の一言。


ただ願ったのは大切な君を守ること。


セレナ……気丈な君は俺が謝る事はない、と言うのだろうか?


優しい君は……シリクスでなく今の自分として生きても、許してくれるだろうか──。












普通は覚えていない前世。

俺はそれを生まれた時から覚えていた。

確かにあの時、願った。



来世でもセレナと一緒にいたい──と。



ずっと後悔していたんだ。

君を、独りにしてしまった事を……。


だから、誓った。

もしも、来世でもまた逢えたら

今度こそ君を幸せにする。

俺はずっと、ずっとセレナだけを愛しているから。



だけど、前世で妹だったアリアも宿敵ラウルも、前世を覚えてなどいなかった。

アリアと呼べば“お母さん”と呼べって言われて

宿敵だったラウルは“お父さん”だった。


いつも不安だったんだ。



この前世の記憶は本物…?




それに何より、俺は……





……私は……





セレナと同じ女の子として生まれてしまったのだから!




神様……こんな、NGってありですか?





「…おはよう。」


今日も朝からラブラブなアリアとラウルこと私の両親。


「あら、おはよう、ライちゃん。」

「おはよう、ライラ。今日も可愛いな。」

「…………。」


き、気持ち悪い。

アリアことお母さんはまだ良いけど、ラウルことお父さんが私に甘いのとか考えられないから!

ってか、娘を口説くな!!


「おーい、ライちゃん! 迎えに来たよ〜。」


天の助け!

美依の声がして、私は急いでお弁当を持って外へ出る。


「おはよう、美依!」


大の親友である美依もまた前世繋がり。

彼女はポンペイでも親友だったロレイウスの生まれ変わりなのだ。

また彼女も私と同じように前世は男で今は女の子という状況である。

まあ、美依は前世を覚えていないからごく普通の女の子なんだけど。


「どったの、ライちゃん?」

「え? あ、ごめん。ちょっと考え事してて。」

「何、また例の夢でも見た?」

「うん、ご名答。」


前世を覚えていなくても親友である美依には前世の話をしていた。

なので、私が前世の話を出来る貴重な人でもある。


「はぁ……何で私、女の子に生まれたのかな。
今度こそセレナを守るって決めたのに。」

「ライちゃん……。」


まだセレナと出逢えてはいない。

それが残念であると同時に私は少し安堵していた。

今の私ではセレナは守れない……今度こそ、今度こそ幸せにしたかったのに。


「大体おかしい……俺はちゃんと今度こそセレナを守りたいって願ったんだ!
それが何で女に生まれる!? 俺の可愛いセレナも女だっちゅーに!」

「お、おさえてライちゃん、シリクスになってるからっ。」

「ハッ、いけないいけない……つい心の叫びを口にしてしまった。」


私は美依にどうどうと言われて現実に戻った。


「でもね、美依。
私は…シリクスは、俺は誰よりもセレナを愛してる。
今度こそ守ると誓ったんだ。」


愛しい俺のセレナ。

逢いたくて堪らないのに、逢うのが怖い。


「うん、それはわかるよ。
私は覚えてないけど、ライちゃんがどれだけセレナって人を愛してたか分かる。」


美依にポンポンと頭を撫でられて少し落ち着いた。

ロレイウスはいつも助けてくれる。

前世でも、今でも。


「とりあえず学校行こう?」

「うん。よし、今日も元気に行くぞ!」


こうして私はNGな日々を過ごす。

私のNGライフはこのままセレナに逢えずに過ごすのだろうか?

時々そんな不安と、安堵が混じった感情に襲われる。

それを崩す出来事が起きるのはその日の夕方だった。


「ライラ、お隣に越して来た人が来たからお前も挨拶しなさい。」

「ん? 誰か越して来たんだ。」


確か隣は空き家だったっけ?

そんな事を思いながら玄関へと向かった私の、俺の瞳に映ったのは。


「初めまして、佑城裕真と言います。」


間違いない……間違える筈がない。

セレナ、セレナ……また、逢えた!


「セレナ!!」

「うわっ!?」

「あの時と同じまま……ショートカットも可愛いよ、セレナ!」

「え、あ、ちょっ!」


でも、ちょっと抱き心地が……こう、硬いというか?


「裕真くん……ライラから離れてくれるかな?」


邪魔すんなよ、ラウル!

あー…、こいつもセレナに惚れてたんだっけ、って俺じゃなくてセレナに牽制してる?


「ライちゃん、男の子に可愛いは失礼よ〜。」


そう俺の可愛いセレナは男の……男の子!?


「えっ!?」


ガバっと離れて確かめる。
ちなみに何を確かめたかは察してくれ!

真っ赤になってるセレナは可愛いけど。


「お、とこ……?」

「どこからどう見ても俺は男だ!」


首を傾げるとムキになったようにセレナは言った。

セレナが男の子に生まれ変わった…?

じゃあ、俺は…私、は……。


「…うそ、でしょ……。」


頬を冷たい雫が伝う。


「ライちゃん、どうしたの!?
悲しい事があったの?」

「裕真く〜ん、早速うちのライラを泣かせるとはっ。」


悲しいこと?
泣かせる?

あぁ……私…今、泣いてるんだ。

悲しいとかそんなんじゃない。

だってセレナと逢えたんだもの。

ねえ、シリクス?

凄く嬉しいよ、幸せだよ。



でも……でも、私が幸せでも意味がないんだよ。

私にセレナは守れない、今度こそセレナを守るって誓ったのにっ!!



「ムキになって悪かったから……その、な、泣くなよ。」


不意にそっと優しい温もりに包まれた。


「セレ…じゃなく、て……。」

「裕真、佑城裕真。」

「裕真、くん…?」


温もりが懐かしい、セレナを抱きしめた時と同じ温もりだ。


「……ごめんね、ありがとう、裕真くん。」


私は涙を拭って笑顔を向けた。


「…別に、これくらい。」


少し照れた裕真くんの顔は確かに男の子だったけど。


「もう大丈夫なのかよ?」


心配してくれる優しい顔は愛しいセレナだった。


「うん。」


嬉しくて思いっきり頷いた。


「いい加減に離れないか…。」


ベリッとラウルことお父さんに剥がされてしまった。


「…せっかく心地良かったのに……。」

「え…?」


つい口にしてしまった言葉を聞いて裕真くんが顔を真っ赤にする。


「うわわ、何言ってんだろね、私!
実は寒かったの! ってわざとらしいっちゅーねん!」


もう焦って自分が何を言ってるかわからない。


「謝る必要なんてないけど……ライラって面白いやつ。」

「…っ……。」


ふっと微笑んだ裕真くんを見て、私の鼓動が早くなったのがわかった。





ねえ、シリクス。

セレナを一番愛したあなたは、女の子として生まれ変わって

セレナを守る事は難しくなってしまったけど。


今度こそセレナを幸せにするって誓いは守れるかな?




生まれ変わっても変わらない、シリクスと私が愛した人。


きっと、シリクスである“俺”が消えてしまっても──例え何度、生まれ変わったって君だとわかるよ。



だって……シリクスである俺も、ライラである私も、君だけを愛しているんだから。



今度こそ唯一人の愛しい人を幸せにすると誓おう。




こうして、シリクスが私として生まれてNGだって思っていた日々は


セレナが裕真くんとして私に逢いに来てくれた、この日から


NGの反対になった──。




初出2007.12.6.
再掲載2021.5.7.

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