Milky Way[コルダ]
金色のコルダ、オールキャラ夢。
七夕の日の放課後。
今宵、天の川を渡り彦星と織姫は一年に一度の逢瀬をかわす。
「織姫!」
「彦星様!」
この日を一年間待ち望んでいた二人はお互いを確かめるように抱きしめあう。
「織姫、逢いたかった。」
「はい、私も。この日を待ち望んでおりました。」
幸せそうに微笑む二人。
なのに涙が出てくる……。
朝日が昇れば、また一年もの間……会えないと知っているから。
朝日までの時間は二人にとって、短すぎる逢瀬だけど。
それでも、お互い以外の誰かを選ぶ事は出来ない。
今、この瞬間の幸せを抱きしめ互いを想いあいながら一年という長い時間を過ごす。
いつか、ずっと一緒にいられるいられる事を願いながら──。
「…起き…て……。」
遠くで誰かの声が聞こえる
(これは誰の声……?)
ぼんやりとした頭で考える。
(…そうだ、この声は愛しいあの人の声。)
ほら、目を覚まして瞳を開ければ
私の愛する人の顔。
あなたの愛しい人は誰?
<月森 蓮編>
「君にはいつも驚かされるな。」
腕を組み溜め息混じりに言う月森にライラは縮こまる。
「うぅ……ごめん。」
「別に謝る必要はない。
だが、君はもう少し危機感を持った方が良いな。」
「うん、今度から気をつける。」
困ったように笑う月森にライラは強く頷いた。
「そういえば、何か夢でも見ていたのか?」
不意に疑問に思っていた事を口にする。
「うん、見てたけど。
どうして?」
「…泣いていた痕がある。」
すっと自分の手をライラの目にやる月森の行動を見て初めて頬を伝う雫に気づいた。
「…彦星と織姫の夢……見てたから。」
自分が泣いていた事に驚きながら呟くライラ。
「それで泣いていたのか?」
ライラの涙を拭いながら月森が眉を寄せる。
「うん、何で彦星と織姫は一年に一度しか逢えないんだろうね……寂しすぎるよ。」
「それで君が泣いても仕方がないだろう。」
「そうなんだけど……。」
少し呆れ気味に言う月森に落ち込んだように俯くライラ。
月森は仕方ないなと言うように小さく笑いながら優しげな眼差しでライラを見る。
「それなら短冊に願い事を書けば良い。」
そう言ってライラの手を握り歩き出す。
「短冊に…って蓮くん、どこに行くの?」
「確か駅前通りに七夕用の大きな笹があった筈だ。
そこに短冊をつるせば良いだろう。」
「でも、何で…?」
不思議そうにするライラに月森は歩みをとめてライラを見つめる。
「俺は君と出逢った事で幸せというものを知った。
だから些細な事でも君の笑顔が曇るのは嫌なんだ。
君が、ライラが笑顔になれるなら俺も彦星と織姫の幸せを願う。」
少し紅くなった顔を隠すようにしながら小さな声で紡がれる言葉。
ちょっと不器用な愛の台詞にライラは幸せそうに笑った。
どうか願わくば、彦星と織姫がいつも笑顔でいられますように──。
Milky Wayが輝く下で願った祈り。
いつかきっと届くと信じながら、二人は手を繋いで幸せそうに微笑みあった。
Fin.
<土浦 梁太郎>
「全くよくこんな場所で寝られるな。」
目を覚ませば恋人の土浦が呆れ気味にライラを見ていた。
「私も寝るつもりはなかったんだよ?」
「でも、寝てただろ?
ついウトウトしちまったって感じか。」
「…みたいです。」
起きて慌てて言うが、溜め息混じりに突っ込まれライラは項垂れた。
「お前も女なんだから気をつけてくれ。
見つけたのが俺じゃなかったらと思うとぞっとする。」
ライラの頭をポンポンと撫でながら苦笑する土浦に心配してくれたのだと感じライラは嬉しくなる。
「何だよ?」
それを見て眉を寄せる土浦にライラは先ほど見た夢の話をしてみた。
「彦星と織姫か、まあ自業自得っちゃそうだよな。」
「えー、梁太郎って結構酷い……。」
土浦の答えに不満そうに返すと土浦が突然ライラを抱き寄せた。
「えっ…ななななん…っ!?」
突然の事に驚き顔を紅くするライラ。
「あの二人が不幸だとしたら自業自得だろ?」
レインの反応に小さく笑いながら土浦が話す。
「…俺だったら誰に何を言われても好きなやつを手放したり悲しませたりするような事はしないぜ。」
少しぶっきらぼうな土浦の愛の言葉にライラは驚きながらも、安心したようにその身を預ける。
「俺らはたまたま同級生で同じ普通科だったけど、別にそれでライラを好きになった訳じゃない。」
「うん、私も。
もし、梁太郎が音楽科にいても先輩でも好きになってたと思う。」
「ああ、だから彦星と織姫もそれに気づけばいつでも幸せになれんだよ、きっとな。」
笑顔で言う恋人にライラは頼もしさを感じながら微笑んだ。
「んじゃ、帰るか。もう天の川が見えるぜ。」
さり気なく繋がれた手の温かさを感じながらライラも土浦と同じように天を仰ぐ。
「…もしかしたら彦星と織姫も今のままで幸せなのかもしれないね。」
幸せそうに目を細めながら呟かれたライラの言葉は、Milky Wayの輝く空に風となり舞っていった。
Fin.
<志水 桂一>
「先輩を僕が起こすのは新鮮ですね。」
目を覚ませば、一つ年下の恋人が楽しそうに微笑んでいた。
「本当だ、いつもと逆だね。」
そんな志水にライラも自然と笑顔になる。
「ライ先輩はどんな夢を見ていたんですか?」
「ん? あのね……。」
興味深そうに不意に問われ、ライラは先ほど見ていた夢の内容を話す。
「彦星と織姫ですか。
確か織姫のお父さんが怒って引き離すんですよね。」
「うん、それで二人は一年に一度しか会えなくなるの。」
少し俯いて切なげに呟くライラの手に志水は自分の手を重ねる。
「大丈夫です。僕の家にはそんな事する人いませんから。」
微笑みながら言われた言葉にライラはキョトンとする。
「それに先輩が会いたいって思ってくれたら、僕はいつでも会いに行きます。」
「桂一くん……。」
いつも脈絡がなくて不思議な言動をする志水だけど。
それはいつもライラを喜ばせるもので。
「僕は先輩より年下ですけど、ライ先輩を守りたいって思うんです。」
「ありがとう、凄く嬉しい。」
嬉しそうに微笑むライラの瞳には綺麗な雫。
「ライ先輩は意外と泣き虫ですね。」
「そう…かな?」
柔らかく微笑みながら涙を拭ってくれる志水を見ながら、照れ臭そうに笑うライラ。
「ライ先輩、今日は少しだけ回り道して帰りませんか?
少しでも長くこの綺麗な天の川を見たいです。」
そっとライラの手をとって、笑顔で聞く志水にライラは嬉しそうに頷いた。
綺麗に続くMilky Wayの下で幸せそうな二人の影がそっと重なった。
Fin.
<火原 和樹>
「起きて、ライちゃん!」
目を覚ますには充分すぎる程の声で起こされれば、焦ったような火原の顔。
間近にあるその顔に困惑と照れでライラは顔を紅く染める。
「ライちゃん……?」
そんなライラにキョトンとする火原。
「和樹先輩……顔が、近いです。」
ポツリと呟かれたライラの言葉に火原の顔が途端に紅くなった。
「ごごごめんっ!」
「い、いえ……嫌だった訳ではないですから。」
少し照れながら返すライラに火原は驚いたような顔をした後、すぐに照れ臭そうに笑った。
暫くそうしていたが気付いたように火原が声を上げる。
「そうだ! ねえ、ライちゃん。何で泣いてたの?」
「え…っと?」
泣いてた、と問われても覚えがないライラは不思議そうに首を傾げる。
「さっきだよ、寝ながら泣いてたでしょ?」
そう言われて自分の頬を触れば確かに涙のあとが微かに残っていた。
「えっと、夢を見てたんです。」
「夢…? 夢ってどんな?」
興味深げに聞く火原にライラはさっきまで見ていた夢の話しをした。
「彦星と織姫かぁ……。」
ライラの話を聞き終わると頭の後ろで手を組みながら火原が呟く。
「おれ、そういうのって考えた事なかったけど。」
火原はうーんっと唸りながら考えいたが不意にライラをじっと見つめる。
「もし、おれが彦星だったらさ、きっと我慢出来なくてこっそり会いに行っちゃうと思うな。」
子供のように無邪気な笑顔を浮かべながら言う純粋で素直な火原にライラは思わず微笑んだ。
「ふふ、和樹先輩らしいですね。」
「あー! それっておれが単純って事?」
ふてくされたような火原を見ながら、ライラは不思議とさっきまでの切なさがなくなってるのを感じた。
「そうですね。でも、私はそんな和樹先輩が好きです。」
「え…えぇっ!?」
くすくすと笑いながら言うライラに火原は驚きながら顔を真っ赤にする。
「…おれも好きだよ。
もし、きみが織姫ならおれはどこでも会いに行くよ!」
照れ臭そうにしながらもストレートな愛の告白に今度はライラが顔を紅くする。
「…約束ですよ?
どこにいても会いに来てくださいね。」
頬を紅く染めたまま幸せそうに微笑みながら差し出されたライラの小指に火原の小指が絡まる。
「うん、約束!
大好きだよ、ライちゃん。」
どんな距離もお互いが愛しい想いには負けないから。
Milky Wayの輝く空の下で交わした約束はきっとずっと二人を繋いでいく。
Fin.
<柚木 梓馬>
「っていう、夢を見たんです。」
目を覚まして早々に話すライラを恋人である柚木は口端を上げて見る。
「へえ、お前が織姫になる夢をね。
意外と夢見がちなんだな?」
「…夢なんだから良いじゃないですか。」
「別に悪いとは言ってないだろ。
それで? 俺が彦星なんだよな?」
頬を膨らませているライラに柚木が問う。
「はい、そうですけど?」
当然とばかりに答えるライラ。
「夢は願望の表れって言うじゃないか。
お前、織姫になりたいのか?」
その答えに満足したように微笑しながら柚木が続ける。
「うーん……物語としては素敵ですけど。
でも、あんな切ない想いはしたくなかなぁ。」
顎に手をあて考えながら苦笑気味にライラが答える。
「…俺を見くびるなよ?」
不意に柚木の手がライラの頬に添えられた。
「え…?」
不思議そうに首を傾げるライラの目前には不敵に笑う柚木の顔。
「俺はお前に意地悪をしても悲しませる事はしないぜ?」
ライラは柚木の言葉と表情に顔の熱が上昇するのを感じた。
「俺が彦星だったら誰に逆らっても織姫を掻っ攫ってやるよ。」
「梓馬さん……。」
他の誰にも見せないライラだけに向けられた柚木の真っ直ぐな、優しく熱の込もった瞳に真摯な言葉。
嬉しすぎてライラの瞳が潤む。
「おい、何でそこで涙ぐむんだよ。
悲しませないって言ったそばから泣く馬鹿がいるか。」
悪態をつきながらも優しくライラの涙を拭ってやる柚木。
「本当に飽きないやつだよ、ライラは。」
「…それって褒め言葉ですか?」
「一応な。」
いつもの柚木の態度にライラもくすくすと笑い出す。
「ライラ、そうやってお前はいつも笑ってろよ。」
柚木はポンポンと軽くライラの頭を撫でながら微笑む。
「お前の笑顔をなくすようなものは俺が消してやるよ。
今までもこれからも、お前を苛めるのは俺だけの特権だからな。」
少し意地悪で不器用な柚木の愛の表現、ライラだけが知ってる素顔。
「苛めるのは程々に……。
でも、ずっと一緒にいましょうね。」
その言葉に答えるように優しく微笑む柚木の顔がライラへ近付く。
きっと彦星と織姫もいつかずっと一緒にいられる日が来る──。
綺麗なMilky Wayが広がる下でそんな風に想いながらライラは愛しい恋人の柚木とキスを交わした。
Fin.
<金澤 紘人>
「ったく、こんなとこで寝てると風邪ひいちまうぞ。」
目を覚ましたライラの前にはライラの好きな人で、教師でもある金澤の顔。
「…夢を……見てたんです。」
「夢ねぇ。それでお前さんは泣いてた訳だな。」
さり気なくライラの頬に伝う雫を拭う金澤の手。
それで初めてライラは自分が泣いていた事に気付いた。
「あ…こ、これは…っ。」
恥ずかしそうにするライラの頭を優しく金澤が撫でる。
「話してみな。ちっとは軽くなるだろ。」
いつも学内で見る顔とは違う優しげな瞳にライラは嬉しそうに微笑み、さっき見た夢の話をした。
「彦星と織姫、ねぇ。」
「はい、何だか似てるなって思ったんです。」
「似てる…?」
少し俯くライラを金澤は片眉を下げながら見る。
「…私もどんなに想っていても好きな人と触れ合う事は出来ないから。」
ポツリと呟かれたライラの言葉。
それは自分の事だと自惚れるにはライラの眼差しだけで充分で。
「…後悔してるか?
他のやつにしとけばって……。」
ライラから目を逸らして問う金澤の瞳は、少し前に悲しい過去の恋を話してくれた時と同じだった。
「後悔なんてしてないです!」
強く断言するライラを金澤は驚いたように見る。
「寂しくないって言ったら嘘になります。
言葉に出来ないのも触れ合えないのも悲しいです。」
一呼吸おいて足元に置いてあったヴァイオリンを金澤との間に移動させる。
「でも、それ以上に好きだから。
それに気持ちを伝える事だけは出来るから……。」
ライラは静かに穏やかな口調で話す。
ヴァイオリンを金澤との間に移動させたのは“好き”の言葉は誰かに聞かれていても大丈夫なように。
そして、ライラが奏でるヴァイオリンの音色は金澤に向かっている事を示す為。
ライラの意図を汲んで金澤は優しく目を細めた。
「お前さんはこんなとこで寝てたから具合が悪くなった。」
突然、言われた言葉を理解出来なくてライラはキョトンとした瞳で金澤を見る。
疑問に答えるように小さく笑いながら金澤がライラの手を握る。
「か、金澤先生っ!?」
初めて繋がれた手。
嬉しいけれど、戸惑いと不安が入り混じる。
「ま、俺も教師だからな。具合が悪い生徒を放ってはおけない。
家まで送って行ってやるから有り難く思え〜?」
おどけたような口調で言う金澤は一言だけライラの耳元で囁く。
「…七夕の今日くらいは……な。」
ライラは一瞬、驚いたあと嬉しくて弛む顔と紅く染まる頬を隠すように俯いた。
繋がれた手がとても温かい。
「彦星と織姫もあと一年も我慢すれば、堂々と付き合えると思うぞ。」
いつの間にか空で輝いているMilky Wayを見ながら金澤が呟く。
この人が愛しい恋人だと堂々と言える、それは遠くない未来にきっと叶うだろう。
そんな二人を幸せそうな彦星と織姫だけが見つめていた。
Fin.
<王崎 信武>
「ライちゃん、大丈夫?」
「王崎先輩…?」
目を覚ますと同時に心配そうに自分を見つめる愛しい人が目に入る。
「怖い夢でも見てたのかな?」
ライラはそう言われて頬を伝う雫に気付く。
「怖いより…切ない、夢でした。」
王崎に渡されたハンカチで目元を拭いながらライラはゆっくりと先ほどまで見ていた夢の話をした。
「そっか、今日は七夕だもんね。
…今だったら何となく彦星の気持ちがわかるかな。」
「え?」
「おれはOBとはいえ毎日はきみに会えないからね。
時々、土浦くん達が羨ましくなるんだ。」
思ってもみなかった言葉を言われてライラは驚いて王崎を見た。
「おれがこんな事、言うのっておかしいかな?」
「いいえ、あの…嬉しいです。」
困ったように笑いながら聞いた王崎の問いにライラは首を横に振って答える。
「嬉しい…?」
「はい、私も時々、王崎先輩の同級生が羨ましくなるんです。」
困ったような顔で恥ずかしそうに話すライラに王崎は優しく微笑む。
「…同級生だったら出会えなかったかもしれない。
友達で終わったかもしれない。
少なくとも今の気持ちはなかったと思うから。」
王崎は穏やかな口調で話しながら愛しそうにライラを見つめる。
「だから、おれは今が幸せだよ。
きっと、彦星と織姫もそうなんじゃないかな?」
ね? と笑う愛しい人を見てライラも自然と笑顔になる。
「不思議です、さっきまでの切ない気持ちが吹き飛んじゃいました。」
「それなら良かった。
…あ、もうこんな時間だ。」
安堵した王崎が腕時計がもう夜を指している事に気付く。
「遅いしそろそろ帰ろうか、家まで送って行くよ。」
ライラは少し照れながら差し出してきた王崎の手に自分の手を重ねた。
Milky Wayが輝く空の下を幸せそうな笑顔を浮かべながら二人で並んで歩いた。
きっと、それはこれからもずっと続く風景。
Fin.
初出2007.7.7.
再掲載2020.10.10.
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