雪月花[鷺森空也(ヘヴン2)]
学園ヘヴン2、鷺森空也×ヒロイン。
ヒロインは尚央の婚約者だった。
初めての会った瞬間から惹かれてた。
懸命に頑張る姿が魅力的で力になりたいと思った。
不意に、遠くを見つめる寂しげな瞳が悲しくて…守りたいと思った。
君がオレだけを見ていなくても構わない。
君が近くにいてくれるなら贅沢は言わないさ。
君は世界中で唯一人、心から愛した人だから。
君は世界中で一番、幸せにしたい人だから。
君に好きだと伝えるべきか、ずっと迷ってた。
オレとしては好きな気持ちはすぐに伝えないけど。
君が最愛の人を喪失くしていると知っているから。
君の瞳が今も尚央理事長を探していると気付いたから。
だから、迷ってた。
けど、君の涙を拭ってあげたいと思ったから。
一番近くで守りたいと思ったから。
今から君に伝えようと思うんだ。
「突然すまない、こんな所に呼び出したりして。」
「いえ、大丈夫です。
それで、どうしたんですか? 何か問題でもありました?」
君は聡明だけど意外と鈍いから、生徒会の用事だと思っているのか。
「いや、オレ個人の用だ。」
「鷺森先輩の……?」
君は頑なにオレの名前をよんではくれないな。
やはり望みはかなり薄いんだろう。
君は……今でも尚央理事長が好きなんだな。
それでもオレは。
「君が好きだ。」
「………!」
驚いた顔、予想もしていなかったって顔だ。
「え、私…を?」
「そう君を、ライラちゃんを愛している。」
「あ……。」
ああ…、そんな悲しい顔をさせたい訳じゃないのに。
「ごめん、迷惑だよな。
わかってるんだ。でも、どうしても伝えたかった。」
困ったような、悲しいような表情が切ない。
それでも、嫌悪を示されなかっただけ良かった。
「…君が尚央理事長を想っている事はわかってる。
けど、そんな悲しい顔を見たくないんだ。」
自覚はあるんだろう、俯いた彼女に続ける。
「笑ってほしい、オレが君を幸せにしたい。
そう願うのは許されないだろうか?」
「…私は、尚央くんが忘れられない…忘れたくないんです。」
苦しい表情で、だけどハッキリと言う。
誠実な君らしいな、と思う。
「忘れなくても構わないさ。」
「え……?」
大きな瞳を瞬かせる君が可愛い。
「尚央理事長を忘れる必要なんてない。
オレは尚央理事長を好きな君ごと、好きだから。」
「…っ……。」
泣きそうな表情を和らげたくて、彼女の頬に手を伸ばした。
「この世にいないから忘れろなんて酷なこと、オレは言わない。」
「…………。」
拒否されなかった事に内心安堵しながら彼女を優しく撫でる。
「尚央理事長を想う一途な君も素敵だ。
だけど、後ろを向いたままではきっと彼も悲しい。」
「あ……。」
うん、オレよりも彼を理解している君ならすぐにわかるだろう。
彼は君が孤独でいる事なんて望みはしない。
「優しい尚央理事長の事だ。
きっと、君が幸せになるなら別の誰かを好きになっても許してくれる。」
寂しそうな、でもどこか納得したような彼女。
「君を幸せにする誰かがオレなら嬉しいと思う。」
「鷺森先輩……。」
「オレでは駄目、だろうか?」
オレを見つめる瞳。
少し躊躇いながら彼女は話し出す。
「私は…尚央くんが好き、絶対に忘れません。
それでも、良いんですか……?」
「もちろん。」
即答した。
数瞬、彼女が瞳を閉じる。
瞳を開けた先にはオレの顔。
「鷺森先輩の優しさに、真っ直ぐさに負けました。」
「じゃあ…。」
「鷺森先輩に惹かれていたのも事実です。」
いや、それは初耳だ。
そうなのか、良かった。
「オレは君に好かれてたんだな!」
「ま、まあ…そうなります、ね。」
恥ずかしそうに視線を逸らして返す彼女を思いきり抱きしめる。
「鷺森先輩!?」
「嬉しい! オレは今、すごく幸せだ!!」
叫びたいほど幸せだと告げると彼女が笑う。
「大好きだ、ライラ。」
「はい。多分、私も…。」
返す彼女の顔はまだぎこちないけど
大丈夫、少しずつ進んでいこう。
春には花見。
夏には月見。
秋には紅葉狩り。
冬には雪見。
雪月花を共に過ごそう。
君の笑顔をずっと守っていくと誓おう。
きっと、空の上から尚央理事長も見守ってくれてるから。
彼が天から祝福を贈ったように優しい風が二人を包んだ──。
初出2020.8.6.
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