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幸せな温度[スザク(ギアス)]
コードギアスのスザク夢。
特殊ヒロイン。




見つけたのは偶然。

でも、運命かもしれないとも思う。

日課のロードワークの途中で

なんとなく、いつもと違う道を行こうと思った。

たまたま僕が通った時に聞こえた鳴き声。

片思いばかりだけど、自他共に認める動物好きの僕が素通り出来る訳がなくて

見つけた、小さくて優しい温もり。

これが僕と――彼女との出逢いだった。



早朝はまだ肌寒いこの季節。

芝生の影にうずくもる温かい命が見えた。

それは小さな身体を懸命に丸め、震えていた。

一見すれば僕と同じか下くらいの女の子。

だけど、丸くなってるその女の子の頭には三角の耳

腰の辺りには長い尻尾までついていた。

多分だけど、人間ならばブリタニア人だと思う。

だと思うというのは

毛先に少し癖のあるサラサラの長い髪。

そこにちょんと乗る三角の耳。

細い腰からのびる長いふさふさの尻尾。

それらがとても珍しい色をしていたからだ。

目色は閉じられていて見えないけど

珍しい毛色に珍しい容姿。

僕は立ち尽くして少女をただ見つめていた。

否、見惚れていたと言った方が正しいかもしれない。

「…っ……。」

少女の小さな震える声に僕はハッとする。

いつからいるかは分からないけど、まだ寒いこの時間にこんな所で寝ていたら確実に風邪をひいてしまうだろう。

自分と違い小さくて華奢な少女。

下手をしたら命に関わる事になるかもしれない。

そこまで考えが至って僕は途端に青ざめた。

急いで自分の上着をかけて少女を横抱き、所謂お姫様抱っこをした。

少女を抱き上げた瞬間、ジャラと鈍い音がした。

そこで初めて気付いた。

少女の白い華奢な首につけられた拘束の首輪と引きちぎられた鎖。

反面、着ている服はかなりの上質なものだ。

あまり頭の良くない自分にもわかる。

少女はどこか、恐らく貴族級の家から逃げ出して来たのだろう。

それならこんな場所で寝ていたのにも納得がいく。

だからと言って今、自分がすべき事は変わらない。

「早く暖めてあげないと!」

僕は少女を抱き上げたまま猛スピードで自宅へと向かった。



僕は家につくてすぐさま少女を布団に寝かせ、ありったけの毛布をかけた。

暖房は強にして、小さな手をギュッと握る。

少しずつ少女の震えが治まっていくのにホッと安堵する。

そして、僕よりずっと小さなこの少女を

守りたい。と強く思った。



「…ん……あれ…?」

ぼんやりとした頭で辺りを見回す。

時計を見ればとっくに夕方の時間。

「あ、あの子は!?」

ハッとして見れば、まだ目を覚ましていない少女が目に入る。

冷静になれば僕の手の中にはまだ小さな温もりがある。

「…大丈夫だよ。」

少女の寝顔にそっと囁く。

握ってない方の手で少女の頭を撫でれば、長い髪はさらさらと絡まる事なく手を滑っていく。

大丈夫、僕がきっと守るから。

そう囁きながら撫でていると少女の睫毛が微かに揺れる。

「………。」

目を覚まして薄く瞳を開けた少女。

その瞳はまるで綺麗な宝石のようだった。

「大丈夫? どこか痛いとことかない?」

出来るだけ驚かさないように優しく声をかける。

「…っ!」

すると覚醒した少女はバッと僕の手を振り払って数歩後方へ飛んだ。

瞳に宿すのは恐怖と敵意。

「大丈夫だよ、安心して。僕は君に何もしないから。」

安心させるように笑顔で手を伸ばしたけど

バリッと小気味いい音で引っ掻かれた。

「痛っ。」

手の甲からじわっと血が滲む。

「やっぱり片思い、か。」

猫には昔から好かれない。

自覚はあるけど、やっぱり悲しい。

それに、この少女にはどうしても嫌われたくなかった。

だけど、好かれる術を僕は知らない。


「…っ…。」

そんな思いを馳せていると、そっと近付く気配がした。

僕が怖くて堪らないのだろう。
その小さな身体はカタカタと震えている。

それでも懸命に僕へと近付いて来る。

「………。」

怖がらせないように僕はじっと黙ったまま少女を見つめた。

不意に近付いた少女が僕の手を舐める。

それはさっき引っ掻かれた傷。

自分が付けてしまった傷を僕が痛がっていると思っていたのだろうか。

猫が傷を癒すように少女が僕の傷を舐めていた。

「大丈夫だよ、僕は痛くないから。」

さっきと同じように出来るだけ驚かさないように話す。

「……………。」

不安げに見上げてくる少女に微笑みを向ける。

「ありがとう、心配してくれたんだね。」

「……何でお礼言う…?
私がつけた傷、なのに。」

少女が初めて声を発した。

澄んだ鈴のような声。

戸惑ったような声色だけど、声が聞けてすごく嬉しい。

「それは怖がらせちゃった僕がいけないんだから気にしないで。
それより君の声が聞けて嬉しい。」

率直に思った事を言えば少女は目を瞬かせ

「………。」

ふわりと微笑んだ。



それから暫くして、少女は温めたミルクを一心不乱に飲んでいる。

「美味しい?」

聞けば笑顔で頷いた。

警戒をといてくれたみたいで安心した。

「君の名前、聞いても良いかな?
あ、僕はスザクだよ。枢木スザク。」

「くるる…?」

「スザクで良いよ。」

「スザク…?」

「うん。」

緩く首を傾げて僕の名前を呼ぶ姿がとても可愛い。

彼女に呼ばれただけで、自分の名前が特別なものにったみたいだ。

「…ライラ。」

ポツリと少女が答える。

その名前にファミリーネームはない。

「ライラか、可愛い名前だね。」

僕はそっとライラの頭を撫でた。

ライラは少し驚いたみたいに目を瞬かせたが、すぐに気持ち良さそうに目を細める。

ピクピクと動く三角の耳、何だかゴロゴロと喉を鳴らす音が聞こえそうだ。


それから少しだけ話をした。

出生やどこから来たのかは聞けなかったけど、好物や趣味を教えてもらった。

「じゃあ、そろそろ寝ようか。」

ライラの頭を撫でながら言えば、既にウトウトし始めている。

その様子に小さく笑いながらライラを布団に寝かせて頭をひと撫でする。

ヤバイ、頭撫でるの癖になりそう。

「おやすみ。」

明かりを消して僕はソファに毛布を持って寝る。

「布団もう一組買わなきゃなぁ。」

天井を見ながら一人、呟いた。



ふとモゾモゾと毛布が動いている事に気付いた。

「…?」

不思議に思ってめくれば、無理矢理毛布の中に入ってくる三角の耳。

「ライラっ!?」

驚愕して跳び起きた。

「な、何してるの…?」


お、落ち着け僕っ。

「……寒いんだもん。」

俯いて答えるライラ。

耳と尻尾から不機嫌な様子がわかる。

布団があれだけじゃ寒かったのか。

「それならこの毛布使って良いよ。」

はい、と毛布をあげればライラがブンブンと首を横に振る。

「や、いらない。」

「え。でも、寒いんでしょ?」

不思議に思って首を傾げるとライラはギュッと抱き着いてきた。

「ライラ…?」

「スザクと一緒に寝る!」

「………。えぇっ!?」

たっぷり5秒、固まってしまった。

普通の猫なら大歓迎だけど、耳と尻尾を除けばライラは極普通の少女だ。

しかも、かなりの美少女で…その……抱き着いている今も柔らかい胸とかが…。

そんな事を考えている間にもライラが毛布の中に入って来ていた。

「だだだ、ダメだよ!」

「? 何で、スザク…?」

うぅ、キョトンとした顔に罪悪感が生まれそう。


「き、君は女の子だし、その…。」

言い淀んでいるとライラがまた僕に抱き着いてくる。

「スザク、温かい。安心する、側にいて。」

もしかしたら、独りが怖いのだろうか。

抱き着いてくるライラが泣いているように見えた。

会ったばかりの僕を信用してくれるのが嬉しい。


反面、会ったばかりの僕に頼るほど孤独なのかと悲しくなる。

この小さな身体で、どれだけのものを背負っているのだろうか。

「…今日だけ、だよ。」

「うん!」

仕方ないなって笑いかければ、返ってきたのは満面の笑顔。

あぁ、なんとなくだけど、この調子で今日だけじゃ済まなさそう。

「ソファーじゃ狭いから布団に移動しよって、ライラ?」

「スー…スー…。」

は、早い、もう眠ってる。

眠かったのに一人で寝るのが嫌で一生懸命起きてたんだな。

僕はライラを起こさないように、そっと横抱きにして布団に運んだ。


ちょっと狭いけど、ライラがピッタリとくっついてくるから布団からはみ出す事はない。

その分、理性を保つのが大変だけど。

「…スー…スー…。」

規則正しい寝息が

小さくて温かい体温が

僕を信頼しているような安心した寝顔が

とても愛おしい。


そして、久しぶりに感じる安心感。

知らず、この小さな温もりに癒されているんだろう。

ライラの寝顔を見つめている内に僕も段々と瞼が下がる。

腕の中にいる愛しい温もりを大事に包み、睡魔へと身を預ける。

幸せな温度を感じながら、僕も眠りに落ちていった。



きっと今日は良い夢が見れる。

明日、目が覚めたら君にとびきりの笑顔で告げよう。


――ずっと僕が守るよ。







小説





2008.5.4.初出
2020.4.19.再掲載

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